
澤村さんによると、レースは組紐のように織るリバーレース、 やや簡易な編み方のラッセルレース、生地に刺繍を施すエンブロイダリーレース、服の襟や袖飾りなどに使われるトーションレースの四つに分類される。
「リバーレースは、2万本もの細い糸で複雑なレース模様を織りあげる高価なものです。機械は200年前からほぼ変わらず、うちでも70年前の機械を自分達で整備しながらレースを織りあげるなど、熟練工の技術が不可欠。手間と複雑な工程が織りなす最高級のレースが、王侯貴族に愛されたゆえんです」
ラッセルレースは、量産できるよう考案された機械を使う。ただし、最近は技術も向上し、見た目もリバーレースに近づいているという。

雅子さまのキラキラ光るドレスの秘密
雅子さまが歓迎式典とパレードでお召しのコートドレスは、まさにリバーレースだった。
「花や蔦が一面に編み込まれた古典柄のレースで仕立てられています。スカートの裾やマスク、帽子には同じ柄のレース生地が縫い付けられています。花弁の影まで表現できる精巧さもリバーレースならでは、です」(澤村さん)
さらに夜の晩餐会でも、花柄のリバーレースで仕立てたイブニングドレスをお召しだった。ダイヤの首飾りとイヤリング、そして頭上には「皇后のティアラ」が輝いていた。
雅子さまのドレスがキラキラと輝いているのは、「フィルム糸」と呼ばれるポリエステルのシートを極細にカットした特殊な糸を一緒に織り上げているためだ。
「皇后さまのレースは、おそらく海外製だと思いますが、織り方は産地にかかわらず同じです。どの糸をどの部分で使うかを書き込んだ設計図面に、フィルム糸の指示も書き込むわけです」