ホース・ガーズでの歓迎式典に臨む天皇陛下と皇后雅子さま、英国のチャールズ国王、カミラ王妃、ウィリアム皇太子。雅子さまは、繊細なリバーレースで仕立てたコートドレスをお召し。スカートの裾と帽子のリボンにも共布のレースを縫い付けて華麗な装い=2024年6月25日午後、ロンドン

 澤村さんによると、レースは組紐のように織るリバーレース、 やや簡易な編み方のラッセルレース、生地に刺繍を施すエンブロイダリーレース、服の襟や袖飾りなどに使われるトーションレースの四つに分類される。

「リバーレースは、2万本もの細い糸で複雑なレース模様を織りあげる高価なものです。機械は200年前からほぼ変わらず、うちでも70年前の機械を自分達で整備しながらレースを織りあげるなど、熟練工の技術が不可欠。手間と複雑な工程が織りなす最高級のレースが、王侯貴族に愛されたゆえんです」

 ラッセルレースは、量産できるよう考案された機械を使う。ただし、最近は技術も向上し、見た目もリバーレースに近づいているという。

歓迎式典を終えて屋根のない馬車に乗る皇后雅子さまとカミラ王妃。雅子さまはコートドレスはもちろん、マスクと帽子にもリバーレースを用いた装い=2024年6月25日、ロンドン

雅子さまのキラキラ光るドレスの秘密

 雅子さまが歓迎式典とパレードでお召しのコートドレスは、まさにリバーレースだった。

「花や蔦が一面に編み込まれた古典柄のレースで仕立てられています。スカートの裾やマスク、帽子には同じ柄のレース生地が縫い付けられています。花弁の影まで表現できる精巧さもリバーレースならでは、です」(澤村さん)

 さらに夜の晩餐会でも、花柄のリバーレースで仕立てたイブニングドレスをお召しだった。ダイヤの首飾りとイヤリング、そして頭上には「皇后のティアラ」が輝いていた。
 

 雅子さまのドレスがキラキラと輝いているのは、「フィルム糸」と呼ばれるポリエステルのシートを極細にカットした特殊な糸を一緒に織り上げているためだ。

「皇后さまのレースは、おそらく海外製だと思いますが、織り方は産地にかかわらず同じです。どの糸をどの部分で使うかを書き込んだ設計図面に、フィルム糸の指示も書き込むわけです」

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ビーズとスパンコールを縫いつけた豪華なレース