
同じリバーレースのドレスでもデザインによって、ずいぶん印象が変わる。
2019年5月、令和に入って最初の国賓として米国のドナルド・トランプ大統領が来日。皇居の宮殿で、両陛下主催の宮中晩餐会が開かれた。
雅子さまが白いロングドレスの上に羽織られていたのは、ひときわ薄いリバーレースのジャケット。透けるように薄いネット地に、花と葉の柄をバランス良く配置させており、難しいデザインなのだという。
実は、花模様などがびっしりと詰まった古典柄のほうが、機械で織り上げる際も糸の張り具合などのバランスを取り易く、傷による生地のダメージもまだ少ないという。

インドネシア訪問で、雅子さまが選んだ幾何学模様のレース
雅子さまがお召しのように、無地の薄いネット地を用いたレースデザインは、海外で好まれるデザインだ。
ただし、織り上げるのがとても難しいレース生地だと、澤村さんは説明する。
「うちの場合であれば、ジャケットをあのデザインで織り上げるための設計図を作る作業だけでも1カ月半は必要です。初めのデザインをスケッチする段階から工程を経てレースを完成させるとなれば、4カ月はかかるでしょう」
雅子さまのレースジャケットがほのかに煌めいているのも、フィルム糸の効果だ。しかし、フィルム糸はとてもデリケート。切れることなく完成させるにも高度な技術が必要だ。見えない部分にも手間暇がかかっている。
「さすがは皇后さまの衣装です」と、澤村さんもうなる。