作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします!(撮影/写真部・小山幸佑)
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 夫の不倫、毒親、友人間の軋轢、理不尽な会社組織……人間関係に悩むあらゆる相談者に「具体的で実現可能な回答」を示し、多くの支持を受けているAERA dot.連載「鴻上尚史のほがらか人生相談」。そのなかで大きな反響を呼んだ回をまとめた「鴻上尚史のほがらか人生相談ベスト」(朝日新聞出版)が、3月7日に発売されました。その収録回のなかでも、特に多く読まれた記事を、あらためて紹介します(この記事は「AERA dot.」に2018年8月14日に掲載した記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

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 鴻上尚史の人生相談。「帰国子女の娘の、個性的な洋服がクラスで浮いた存在に」と相談者。娘に普通の服を買ってあげるべきか悩む母に、鴻上尚史が答えた生き延びるための戦略とは?
 

【相談2】「帰国子女の娘が潰されそうです」(相談者:38歳 女性 フォトグラファー)

 小学校5年の娘がいる母親です。夫も私も写真家で、半年前までの6年間、家族はアメリカに在住していました。娘はおしゃれな夫の影響を受けて洋服に興味があり、ビビッドなカラーのものを好んで着ていましたし、ダンスが好きでその衣装も自分で作ったりするほどおしゃれ好きで活発な女の子でした。

 日本に戻るとき、もしかしたらと夫と不安に思っていたのですが、案の定、でした。日本の学校に通うようになって、1カ月半くらいして、悲壮感いっぱいの顔で娘が「服を買い替えたい」と訴えてきたのです。どうやら教室の中心にいるような女の子から「服が派手すぎない? 誰もそんな色着ないよ」と言われたのをきっかけに、クラスの目が冷たくなっていったようです。最初は「かわいい服だね」と羨ましがられていたはずなのに、突然、浮いた存在になってしまったのです。

 話を聞いた夫は怒った口調で、「人目なんて気にせずにおまえらしく好きな服を着ていけばいい。同調してつまらない人間になるな」と言いますが、現実を考えれば娘にとって、酷な言葉ではないでしょうか。私だって、いままでどおり娘に自由に好きな服を着てほしいと思いますが、クラスでいじめにでもあったらと気が気ではありません。

 新しい(よくある)服を買ってクラスに馴染むようにするのが娘のためなのか、これまで通りの自分をつらぬいて強い気持ちをもつよう諭すのがためなのか、とても迷っています。鴻上さんのご意見をお聞かせください。

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