
ただ、私は、「読売一強」と言えるのかな、と思っています。あくまでも縮小しつつある新聞というマーケットの話で、これを人々の可処分時間にまで視野を広げると、むしろ読売は弱者ではないかと。実際、読売グループ基幹6社(21年からは7社)の売上をみてみると、02年には4896億円あった売上は、23年には2588億円、約半分にまで減っています。
南:おっしゃるとおりですね。あえて私が「読売一強」という表現をしたのは、朝日新聞に生き残って欲しいと思っている人たちに「経営(者)」の差を直視して欲しいと思ったからでした。
生成AIの新聞に与える危険性について、早い段階からはっきりと認識していたのは読売新聞グループ本社社長の山口寿一さんでした。他社の上層部との認識の差は歴然です。下山さんは新著の中で、わっと生成AIに飛びつく新聞各社の様子を、「2000年代にヤフーにとびついた時のことを思い出す」という趣旨のことを書かれていましたが、その通りだと思います。
買収を可能にする制度改革は必要
下山:今度の本『持続可能なメディア』では、「『持続可能なメディア』の5条件」という章をもうけています。そのうち4の「買収が可能で、横の流動性があるか?」、についてはどう思われますか? 新聞は日刊新聞法で、株の譲渡の制限がかけられ、テレビ局はライブドア事件の直後に放送法が変えられて、特定の株主が3分の1以上を持つことができなくなってしまった。
南:次世代が活躍する基盤を残すために、必要な改革だと思います。そのためにも、現場の自律性が急務です。たとえば新しいオーナーが、報道の現場をこわすことをやってきたときに、それをはねかえすジャーナリズムの感覚を現場は持っているのか。現状は、弱い現場と、ぬるま湯の経営陣がもたれ合っています。
下山:条件の5の「群れず、孤立を恐れず」についてはどうでしょう。新聞労連の時は南さんに救われたわけですが、つい最近も似た経験をしました。元記者らがつくっているフォーラムの分科会で「若手の記者をどうしたら辞めさせないようにできるか」というテーマが設定されていたのですが、その途中で、「辞めることがなぜ悪いのか。いいじゃないか。もっと業界内外の移動がないと、どうしても議論がタコつぼになる」と言って、その例として、共同通信の国際女性デーの配信記事が地方では刺さっていない、という話をしていたら、途中で司会者に遮られてしまった。