『持続可能なメディア』朝日新聞出版2025年3月13日発売

 この分科会自体は昨年のことですが、今年、私のその時の発言が問題視されている、と言われて驚愕した次第です。

南:下山さんの議論はこの本にしても、ざらっとしたものを投げかけてくる。思考が揺さぶられる。変革期なのに、そこに目を背けるのはよくない。「意見をする友」の存在は貴重です。

 メディア業界が縮小する中で、内輪の論理が強まっています。SNSを使って独自にネットワークを築くなど、外に開いて、自分の頭で考えてやっていくことが大事です。

下山:本当にそう思います。共同通信の国際女性デーの際の報道は、たとえば政治家や県庁の管理職などで女性の数を分子にして、それが何パーセントか、ということを県ごとにやって、配信するというものでした。

 それが低いということはわかっても、それでなぜ駄目なんだと保守的な地方では思うでしょう。「それは基本的人権なんだ」では、そもそも地方紙に配信した記事は読まれない。共同通信は、地方紙が加盟分担金を出し合って運営している社団法人です。もっと届け方に工夫があるだろう、ということです。

南:ジェンダーの問題では、私は組織の管理職のまず3割は女性にする、というクォータ制論者です。新聞労連委員長になって、まず取り組んだのがこの問題で、労組の役員のうち最大10名を女性役員枠とすることにしました。

 これは男性が圧倒的多数を占めている組織では、女性が管理職になっても孤立するか、「名誉男性」になりがちで、男社会の論理にしたがって行動してしまう。女性の意見を反映することが難しい、というハーバード大学の社会学者ロザベス・モス・カンターの理論によるものです。

下山:はい。私もそのことを、南さんの『絶望からの新聞論』で読んで、なるほどと思いました。なぜ、3割なのかという前提条件のところから説明があるからです。

 本来、ジャーナリズムというのは、違う意見に耳を傾けるところから始まります。たとえば先のフォーラムでも、異質な意見と排除するのではなく、むしろこの共同のジェンダー報道を指揮した女性の編集局次長との対論をやらせてくれればいいのにと思いました。

『絶望からの新聞論』地平社、2024年4月刊

地方でのメディア存続の可能性を探った、対談後編はこちら。

(構成/書籍編集部・吉崎洋夫)

AERA 2025年3月17日号より抜粋

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