学会で発表したプレゼンテーション資料。数学が苦手科目だったが、相関係数などを用いて作り上げた

「彼は好奇心や探究心のアンテナがとても強く、公立よりも自分の好きなレベルでどんどん先に進める私立のほうが向いていると思ったので、中学受験だけは親が誘導する形で挑戦してもらいました」

 インドから帰国後、進学塾に通い、中高一貫の芝中学に合格する。しかし、合格発表の前日に父親に米国転勤の辞令が出ていた。悩んだ結果、「英語圏での生活は貴重な経験になる」と家族全員で米国に移り住んだ。

「この米国生活がなかったら大学受験の際『一般受験で共通テスト頑張れ』と言い続けていたのではないかと思います。米国では中学生から授業が選択制で、常に自分で考え、進度もものすごく柔軟にやらせてもらえたんです。一方で日本に帰ってくると時間割がきっちりあって、科目を万遍なく学ばなければいけない。息子にとって、関心がない科目を受験のために学ぶより、興味があるものにどんどん突き進んだほうがいいのではないかと考え、一般選抜以外の選択肢もあるよと伝えました」

 清水さんは勉強が苦になるタイプではなかったが、一般選抜を避けて、高校1年生の時点で推薦入試での進学を考えていた。探究テーマを大好きな「英語」に設定し、「英語で話すときの日本人の心理について」を掘り下げた。

「英語を話したいと考える人はたくさんいるのに、実際に話せるようにならないのは何が原因なのかと考えたのがきっかけです」

 英語を研究するということは英語がわからない人向けに研究すること。言語がわからない感覚を取り戻すため、高校2年生時には新しい言語を勉強しようとスペイン語圏のメキシコに短期留学もした。

 その後、日本で英語教育に関する大学教授をリサーチし、実際にコンタクトを取って関係を築くと、共同での研究を始めた。テーマの策定、実験などさまざまに助言をもらい、高校3年の6月に共同発表という形で外国語教育メディア学会で発表。発表内容は「日本の中高生が英語で話すときに精神的に妨げとなっている因子の特定とその影響を緩和する方法」。

「友人に被験者として協力してもらって、実際に英会話を繰り返してもらいました。羞恥心を数値化する指標を用いながら、何をしたら羞恥心がなくなるのか様々な方法で検証しました」

 学会での発表の場に高校生は清水さんだけだったが、このプレゼンは好評を得たという。「英語で何かをするのが好き」な清水さんは大学生活に思いをはせる。入学式では新入生代表として英語でのスピーチも任されている。

「国際教養大はリベラルアーツ教育というカリキュラムで、専門を決めずに学科を横断する力を鍛えるという点が僕にとって魅力でした。自分の興味の赴くままに好きなことにはまっていきたいです」

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