
「ランチをのぞけば、人生が見えてくる」をモットーに、働く人たちの昼ごはんを紹介するNHKの名物番組「サラメシ」が、3月13日に最終回を迎える。一生懸命に働き、つかの間のランチでおなかと心を満たす。そんな“普通”の人々の姿に励まされ、時にホロリと心を動かされた視聴者は少なくないだろう。14年もの間、幅広い世代に愛されたサラメシは、どんな思いで作られていたのか。チーフ・ディレクターを務める制作会社「テレビマンユニオン」の石井大介さん(49)に、番組スタート時から大切にしてきた“サラメシイズム”を聞いた。





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サラメシが3月で終わる。
そのニュースを知った時、すぐに石井さんの顔が頭に浮かんだ。記者がかつて編集部員として在籍していた週刊誌『週刊朝日』が2023年に休刊した際、“編集部最後の10日間”のサラメシを世に伝えてくれたのが石井さんだった。
「あの時は、2年後にサラメシにも終わりが来るなんて思いもしなかったですよね?」
そうたずねると、石井さんは、
「オワコンと言われて久しいテレビ業界にいる以上、『明日は我が身』と思いながら撮っていましたよ。でも、いざその時が来るとね……」
と、力なく笑った。
石井さんはサラメシ立ち上げ時からのメンバーだ。一般人の昼ごはんをテーマに番組を作るという斬新な企画に、多くの技術スタッフは当初、怪訝な顔をしたという。
「ベテランのカメラマンや音声スタッフたちは、『昼の間横にいるだけでドキュメンタリーが撮れるのか』『500円の社食を映して何が面白いんだ』などと不安がっていました。でも、『それでよくない?』と思いました。みんなが過ごしている日常の中の、ちょっとすてきな息抜きのひとときを、正々堂々とテレビで取り上げよう。そう決めました」