紀伊國屋書店 代表取締役会長 高井昌史さん(たかい・まさし)/1947年、東京都生まれ。71年紀伊國屋書店入社。各地の営業所長、情報メディア本部長、営業総本部長などを経て、2008年、代表取締役社長。15年から会長兼務、23年から現職(撮影:写真映像部・松永卓也)

 ブックセラーズ&カンパニーへの参加出版社は2025年2月時点で17社。地方の本屋さんから「うちも入れて」と声がかかっています。最終的に1千店舗ぐらい加入していただけたら、業界が変わってくると思います。私も55年くらい紀伊國屋書店で仕事をしているけども、最後に銅像とまではいかなくても肖像画くらいは描いてもらってもいいかな(笑)。

今村:書店はこれから3年から5年でいろんなことが変わっていくし、変わっていくからこそ今やるべきことをやっているだけなんです。今年、来年はちょっと海外の仕事なんかも含めて、僕の小説の展開も含めて海外にも行きたいなと思っていたんです。やっぱり、新しいことができる可能性はあると思うんで。

本屋は平和の象徴、教育と文化の発展のために

高井:いま日本のコミックは世界中で非常に読まれています。日本では読書離れと言われてますけど、世界では教育レベルの向上に伴って英語を話す人が増えることで出版市場が拡大しています。コミックに限らず、どんどん翻訳して、日本の作品を世界中の人に読んでもらうことが、これから日本の出版業界で行っていかなければならないことだと思います。

作家 今村翔吾さん (いまむら・しょうご)/1984年、京都府生まれ。滋賀県在住。ダンスインストラクター、作曲家などを経て作家に。2022年、『塞王の楯』で第166回直木賞受賞。21年11月からは書店経営も行う(撮影:写真映像部・松永卓也)

 世界には政情が不安定な地域もたくさんありますが、いつかはきっと平和になります。そのとき教育と文化の発展のために本屋が必要とされるでしょう。(創業者の)田辺(茂一)の後を継いだ松原治・前会長が「本屋はね、平和じゃないと商売にならない。平和なところにはどんどん出店しなさいよ」と言っていました。今でもそれを守っています。

今村:本屋は平和の象徴ってことですね。

高井:56年前にサンフランシスコに進出したのが紀伊國屋書店の海外初出店です。田辺茂一はドン・キホーテみたいなことをやっているけど、それが世界への第一歩だった。こんな楽しい仕事はないですよ。

今村:本当にそうですね。もっと若い子も巻き込んでやっていきたいなと思う。大きな書店もいつかやりたいなって思っています。広さのメリットっていうのをめちゃめちゃ感じているので。次は100坪の書店をやりたいなとか思いますよ。

高井:バーチャル書店ができたら、楽しいなと思っています。ウェブ上で新宿本店のリアルタイムの在庫をVR映像で見て実際に購入することもできる。そんな書店です。新しいことに挑戦を続けることで、業界が活性化していくことを願っています。

今村:いろんな人がいろんな形で試行錯誤しているので、これからの本屋、出版業界は大きく変わっていくと思います。(読者のみなさんも)楽しみにしていてください。

(構成/編集部・三島恵美子)

AERA 2025年3月10日号より抜粋

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