
出版不況が叫ばれるなか、業界を活発化させるためにはどうすればいいのか。本屋の未来について、作家で書店経営も行う今村翔吾さんと、紀伊國屋書店の高井昌史会長が語り合った。AERA 2025年3月10日号より。
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――以前、今村さんはご自分の銅像を建ててもらいたいということをお話されていましたね。
今村 そうなるくらいに功績があるといいなということなんですけど(笑)。最近、林真理子さんに、「菊池寛さん以来」って言われました。菊池寛さんは出版社を立ち上げ、芥川賞、直木賞などを創設して出版界を盛り上げました。だからといって書かないわけではなくて、書くことをやりながら。菊池寛以来の、なんでもやるタイプの作家ということなのでしょう。最近はLINEでも、林さんから「寛君」って呼ばれるんです(笑)。
高井 紀伊國屋書店創業者の田辺茂一は出版社と対決をして正味改善運動なんかもやっていましたから、今村先生の話を聞いていたら、田辺も「いいのが出たな」と思ったでしょう。今村先生の銅像は立つんじゃないかな。
──高井会長は23年、ブックセラーズ&カンパニーを、紀伊國屋書店、日販、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の3社で設立されました。これは、出版社との直接取引で粗利益拡大を目指すという試みです。
高井:構造改革をしなければ何も変わりません。CCCと日販と共同出資して新会社を立ち上げました。書店が仕入れと販売に責任を持ち、返品率を抑えることで利益率を改善することを目指しています。
今村:作家側から言えることは、スポーツ選手だったら戦力外通告されるわけですよ。でも作家にはそれがない。それがないがゆえに次のステップに行けない人間も大量にいるんですよ。アルバイトしないと生活できない、真綿で首を絞められているような人たちが。でも「君はもううちでは出せません」って言ってあげた方が気楽で、次の仕事に行けますよ。
もしも僕が言われたら、社長一本でいけますし。本当に嘘じゃなく、3回ピッチャーとして投げて、3回とも打ち込まれたらもうクビやなって思って書いてますから。
高井:業界全体で新しいことに挑戦する必要があるということですよね。