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 コメの高騰により外食産業でも値上げが相次ぎ、コメ離れが起きつつある。「消えた21万トン」とされるコメはどこへ行ったのか。物価高が続く日本の「令和の米騒動」の行方は。AERA 2025年3月10日号より。

【図表を見る】コメの高騰がとまらない!!

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 農水省によると、2024年産米は23年よりも18万トン多い679万トンの生産量だが、農協など主要な機関の集荷量は前年よりも21万トン少なかった。

「消えた21万トン」はどこへいったのか。

 コメ業界では様々な説が飛び交っている。「主犯」とされているのが投機筋の動き。コメの高騰に目を付けた異業種が参入し、転売による差額を得ようとコメをかき集めているというものだ。

 ほかにも、農家が出さない説、消費者が買い込んでいる説、大阪・関西万博に備えて業者が買っている説もある。農水省の統計はサンプルから試算しているため、調査自体が不正確など、様々な「説」が流れている。複数の要因が絡み合い、どこかで目詰まりした結果、市場のコメの流通量は減っている。

 今年1月30日、卸売業者でつくる全国米穀販売事業共済協同組合は農水省に要請書を出した。今年に入り、コメの集荷がままならず、前年の2割しか集まらない業者もあるという。そして「昨年にも増して厳しい品薄・欠品状況を招きかねない」(担当者)と危機感を募らせ、在庫量などを正確に把握し、国民への情報発信を求めた。

早くも出荷制限始まる

「一度の注文は12本(5キロ入り)まで」

 2月に入ったころ、横浜市のスーパーに、コメの卸売会社からこんな連絡があった。スーパーに出荷の制限をかけ始めたのだ。

 昨夏と同じような動きだが、まだ春にもなっていない。「こんな時期の出荷制限は初めてです。こうしないと秋まで継続的にコメがもたないのでしょう」と担当者は案じた。

 思惑がはずれた農水省は、重い腰を上げざるを得なかった。

 前農水相が備蓄米の放出を否定してから約半年が過ぎた今年1月24日。後を継いだ江藤拓農水相は記者会見の場で方針転換を表明した。

 江藤氏は「新米が出てくれば、市場が落ち着くという見通しを農水省は持っていた」と前置きし、米価の高止まりの懸念から備蓄米を放出する方針に転じたことを強調した。

「せっかく米価が高いところまで上がってきて、将来に明るい兆しがでてきた。その一方で、価格の高止まりでコメ離れが起きている。安定的に食料を供給する義務が農水省にはある」と説明した。

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