
コメの高騰がとまらない。2月の価格は前年の9割高と2倍近くまで上がった。背景には諸説あるようだが、昨年勃発した「令和の米騒動」がさらに強まり、広がっている。AERA 2025年3月10日号より。
* * *
「高いですね。倍とは言わないが、5割は上がったという実感は持っている。実際、スーパーに行くとコメそのものがないということもあるので、消費者にとって極めて深刻であるという認識は共有している」
石破茂首相は2月17日の衆院予算委員会で、立憲民主党の近藤和也氏からコメの価格が高すぎると問われ、こう述べた。だがネット上では「実感とずれている」「どこの激安スーパーの話?」などと批判するコメントが出た。
それほどコメの高騰は生活者の暮らしを直撃している。農林水産省が全国のスーパーの小売価格を集計したところ、2月10日の週は、5キログラムあたり3892円。前年同期と比べて9割も高くなっている。
スーパーだけではない。外食やコンビニも単品のライスやおにぎりなどを相次いで値上げしている。ファミリーレストラン「デニーズ」は昨年12月からライスをこれまでの209円から44円高い253円にした。従来は無料だった朝食や昼食時のライス増量無料サービスも終了し、55円の有料とした。輸入米でしのいでいるチェーン店もある。
農政の失敗が追い打ち
円安の影響などで輸入品を中心に物価高が続く日本だが、なぜ国産のコメがここまで急騰したのか。
業界団体を取材すると、ほぼ一致した答えが、「2023年産米の影響が今も続いている」との見方だ。これに追い打ちをかけたのが「農政の失敗」だという。
23年は猛暑だった。特にコメどころの新潟県が大きな影響を受けた。夏に雨が少なく、米粒が白くにごり、例年は80%ほどのコシヒカリの1等米の比率がわずか5%にとどまった。秋田県や山形県といったコメどころでも1等米の比率が下がった。精米したときの歩留まりが悪く、せんべいなどに用いられるくず米と呼ばれるものの生産量も少なかった。