占い師、作家 しいたけ.
この記事の写真をすべて見る

 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

*  *  *

Q:小説家になりたいとずっと思っていて、実は昨年小さな賞を受賞することができました。しかしながら、小説家としてここからまたどんなことを頑張っていったらいいのかわからず、悩んでいます。作家の先輩として何かアドバイスがあれば教えていただきたいです。(女性/会社員/33歳/やぎ座)

A:ぜひやったほうがいいことがあります。それをやることによって、自分の存在を広めることもできるし、モチベーションにもなる、フィードバックも得られて、受け手も喜ぶ。僕の体験からも、とてもお得だと思うのでぜひやってほしいんですが、それは何かというと「無料でできる貢献」です。

 世の中には、何かやりたいことがあるけどその時間がないという人が想像以上にたくさんいます。小説を書くうえでは、きっと資料集めをしなければいけないですよね。その資料集めの途中、面白いネタの一つや二つ、必ずあるはずです。それを世の中に伝えていってほしいのです。SNSを使うのもいいと思います。

 例えば「最近の恋愛の駆け引きってこうやるらしいよ」とか「昔の資料漁ってたら、こんな人見つけた」のような、ちょっとしたおもしろネタをぜひみんなに知らせてください。

 ただし、自分の小説を読んでもらいたいからSNSで発表するというのは、これと似て非なる行為です。

 イメージとしては、豆腐を作る過程で発生するおからを、いかにお客様が喜んでくれる形で提供できるか、みたいな。時間がない人たちが楽しめてちょっとタメにもなる娯楽みたいなものがいいと思います。

 ある職業に就くとき、表向きに掲げている看板とは別に、裏の肩書、裏のコンセプトが必要です。存在が光る人って、やっぱりコンセプトがしっかりしている人。

 ちなみに僕のしいたけ占いには、「田舎に住むおじいちゃんから都会で働く孫娘への手紙」というコンセプトがあります。これがもし「占い頑張るぞ」だけだったら、「占いを当てなきゃ」「週1じゃなく毎日更新しなきゃ」のようになっていって、こんなに長く続けることはできていなかったかもしれません。

 今の時代、メディアや企業側に作家をゼロから育てる体力はなくなり、自分でファンを獲得していかないとなりません。ファンにいかに貢献するか、が次の扉を開いていくように思います。

「ファンに貢献しなければいけない」というと、やぎ座の場合、そのことをすごく深刻に考えてしまうかもしれません。豆腐の副産物であるおからを提供するはずだったのに、おからのフルコースを作ってしまう、というのがやぎ座的な頑張り方。自分一人で考えていくと、本格サービスになりすぎて時間が取れなくなる可能性があるので、人に相談しながらやることをお勧めします。

AERA 2025年3月3日号

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼