SNSでの存在感カギ

 選ばれるマスメディアになるにはどうすればいいか。

 東海大学教授の水島さんは、「パブリックな報道機関としてSNSの中で存在感を高めていくことが重要」と説く。

 SNS時代になり、マスメディアは「情報の速さ」においてかつてのような特権的地位を持てなくなっている。さらに、記者の数は少なくなり力がどんどん落ちている。ジャーナリストとしての理想を掲げたとしても、それを十分に行使できないのが現状だと言う。

「しかし、マスメディアが培ってきた事実を報じる姿勢は今こそ大切にすべきです。SNSでフェイクニュースや陰謀論が渦巻く中、マスメディアに携わる人たちはプロとして取材したニュースを、SNSの中で責任を持って提供していく。それはマスメディアが生き残るためにも、重要です」

 元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤さんは、マスメディアが信頼を取り戻すには、「取材と検証が必要」と話す。

 マスメディアは本来、現場に行き当事者の声を聞き、一次情報を多角的に集め、検証し、発信するのが役目だ。しかし、コストも人員も減っているにもかかわらず記事を量産しなければいけない。そんな中、二次情報や三次情報、さらには臆測をも基に簡単にニュースをつくり、オピニオンとして発信する状況になっている。肝心要の一次情報や当事者の声を検証した成果物が少ない、という。

「しかも、問題が解決するまで付き合おうとせず、すぐ次のコンテンツに移っていくため途中で責任を放棄しているようにも見えます。そうしたことが、マスメディアへの信頼をなくすことになっています」

 マスメディアの存在意義は、「声なき声を伝えること」だと堀さんは言う。

公益性あれば届ける

 悩みを抱えている人がXやYouTubeで「助けて」と発信しても、拡散されなければその声は届かず、悩みや苦しみは解決しない。しかし、マスメディアは力が弱くなっているとはいえ、テレビやラジオは電波、新聞や雑誌は流通網によって「マス」、つまり「大衆」に届ける力がある。重要なのは、取材者が声を上げている人の声を聞き、検証し、公益性があると判断したら届けることだと堀さん。

「それによって悩みを抱えている人を救い、守ることができます。こうして徹底して一人の悩みに向き合って初めて、変化が生まれます。その繰り返しが、最終的にマスメディアへの『信頼』に繋がります」

 SNSと民主主義。SNSは人々に「声」を与えたが、その声が響くかどうかは一人一人の使い方次第だ。民主主義を守るのも壊すのも、私たち自身だ。(編集部・野村昌二)

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