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「マスゴミ」などと揶揄されるマスメディア。だがマスメディアが痩せ細れば、民主主義が歪められる危険もある。「SNSと民主主義」の最終回は、マスメディアの役割と存在意義を考える。AERA2025年3月3日号より。
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「マスメディアは選ばれていない」
メディア研究者で東海大学教授の水島久光さんは指摘する。
昨年11月に行われた兵庫県知事選。斎藤元彦氏の当選が確実となると、Xにはこんなワードが次々とトレンド入りした。
「SNSの勝利」
「マスメディアの敗北」
「オールドメディアの終焉」
SNS時代に浮かび上がった「民主主義の危機」。その主な理由は社会を分断させるSNSや動画の存在と、テレビや新聞、雑誌など既存のマスメディアへの不信だ。
水島さんによれば、SNSの世界では、他者が置かれた立場や社会問題に思いを馳せるより、自分にどんな影響や利害があるかという価値の方がより重要になっている。しかも、SNSでは自分に関心のある情報しか基本的に見ないので、ストレスは少なくて済む。不快な情報が紛れても、スルーや簡単にバッシングもできるのでストレスはたまらない。
「そうした人たちにとって、マスメディアは一方的に情報を押し付けてくる暴力や権力装置に見えるわけです」(水島さん)
「オールドメディア」
実際、ネットやSNSの隆盛とともに新聞や雑誌の発行部数は落ち込み、若者を中心にテレビ離れが進む。20世紀に全盛を誇った新聞や雑誌、テレビはもはや「オールドメディア」「マスゴミ」などと揶揄され、マスメディア不要論までささやかれる。総務省情報通信政策研究所の調査では、2023年の平日の主なメディアの平均利用時間はネットが194.2分だったのに対し、テレビは135分、新聞はわずか5.2分だった。
社会情報学などを専門とする学習院大学名誉教授の遠藤薫さんは、マスメディア不信の背景を次のように語る。
「マスメディアの立ち位置が、世の中の動きにつられグラグラしています。それが結果的に、マスメディアに対する不信感に繋がっています」
例えば、16年の米国の大統領選挙では、米国内のリベラル系有力紙は民主党候補への支持を明確に示し、トランプ氏を激しく批判した。しかし今回、ワシントン・ポスト紙やロサンゼルス・タイムズ紙は特定の候補への支持表明を行わず、議論を呼んだ。マスメディアが自らの意見表明を控えるのは自由だが、場合によってはご都合主義のようにも見える。そのため、マスメディアへの不信感が高まっていくと遠藤さんは指摘する。