「家よりグレードが高い環境」でなければ、出社のメリットがない

「在宅勤務も普及したこの時代に、こうしたコストを無駄だという方もいらっしゃるかもしれませんが、私はむしろ逆かなと思っています。家で働いていて、家と同レベルの環境しかオフィスにないのだったら、同僚と話をしに来る以外に出社のメリットがないじゃないですか。家よりグレードの高い環境で働ける場所がもう1つあるというだけでも、従業員にとってはメリットだと思います」(同)

実際、オフィスオープンから3年後の2023年に実施したアンケートでは、オフィスに満足していると回答した人の割合は、「とても満足」67.7%、「やや満足」23.5%で9割を超えていたという。
 

「モンスト」ヒット時の反省も……

 そんな充実したデスクは、全フロア合計で2900席ある。従業員数が約1600人なのに対して圧倒的に多い。なぜこんなに余らせているのだろうか?

「以前、スマホゲーム『モンスターストライク』のヒットを受けて、従業員の採用が非常に急拡大した時期がありました。席が足りず、会議室をつぶして席を増やしていったのですが、それでも増員に追いつかず、サテライトオフィスを近くに建てたんです」(同)

 しかしそれでも席が足りず、翌年にはさらにサテライトオフィスを構築しなければならないほど、誰も予想できないような採用の拡大が続いた。現在のオフィスができる前には、渋谷に4拠点のサテライトオフィスを設けていた。

「さすがに、渋谷スクランブルスクエアに移転してからもサテライトオフィスを作るとなると、コストもかかりますし、ここと同じスペックのオフィスをつくるのも難しい。であれば、数年先に人員が拡大した場合も想定して、多めに席を用意しました」(同)

※【後編】<社長室「ナシ」の会社も! 全席に「アーロンチェア」「昇降デスク」、フロアの真ん中に役員席……「風通しがいいオフィス」の共通点は>に続く

(文/白石圭)

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