ドローンが撮影した膨大な画像からピラミッドを3DCGに変換。これまで見えなかった空間が見えてきた。沈没船の調査などでも使われる技術だ (c)WORLD SCAN PROJECT

近年未知の空間も発見

 このようなピラミッドそのものについてのデータは、人力で測量した1960年代頃から、50年以上、アップデートがされていなかったもの。それを河江さんたちの研究グループが写真測量を用いてデジタル化、積まれた石のひとつひとつが判別できるぐらい細密なデータで再現することに成功した。

「私が古代エジプトの研究者になるきっかけとなった、子どもの頃のテレビ番組でも、ピラミッド内部にはまだ未知の空間があるのではないかという仮説を立てて、さまざまな検証を試みていたのを覚えています」

 例えばそのひとつは、ピラミッド内部に実際に穴を開けてファイバースコープで中をのぞくという、けっこう無謀な実験だった。あげくピラミッドの一部を破壊したことで世界中から非難を受けて、プロジェクトは中止に追い込まれたという。

 一方、近年は、宇宙から降り注ぐ素粒子を用いた透視調査によって、未知の空間も発見された。おそらく、ピラミッドを建設する中でトライアンドエラーをしながら設計した際に、生まれた空間と考えられている。設計から完成まで、すべて設計図通りに進められたと考えられていたピラミッド建設。実は、途中の設計変更が少なくなかったのだろう。

 テクノロジーの発展とともに研究の速度も精度も上がり、さらにおもしろくなってきた古代エジプト。貴重な遺物の数々も紹介され、博物館のシャワーを浴びるのには、ぴったりだ。(ライター・福光恵)

《貴族の男性のレリーフ》/前1292~前1075年頃 ※東京展のみ出展(写真:Brooklyn Museum)

AERA 2025年2月24日号より抜粋

※「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」は東京・六本木の「森アーツセンターギャラリー」で4月6日まで開催している

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