エジプト考古学者:河江肖剰さん(かわえ・ゆきのり)/名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター教授。エジプトのピラミッドの研究調査を行う(写真:張 溢文)
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 森アーツセンターギャラリーで開かれている「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」。最新テクノロジーで悠久のロマンを解明しつつある今こその楽しみ方がある。案内人のエジプト考古学者・河江肖剰さんに聞いた。AERA 2025年2月24日号より。

【写真】ドローンで撮影したピラミッド画像を3Dに変換すると、こんなところまで見えちゃう

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 展覧会では学術的発見の一部も、わかりやすく紹介されている。例えば、これまで文字だけでしか知ることができなかった古代エジプトの言語が音で聞ける試みだ。

「流れているのは『ピラミッド・テキスト』と呼ばれる古代エジプト最古の葬送文書の一節。お葬式のお経のようなものですね」(河江肖剰さん)

 ただし、古代エジプト語では、文字になるのは子音だけ。音にするのがむずかしいとか。

「そこで言語学者の先生が、古代エジプト語から派生したとされるコプト語という言語や他国で発音がわかっている言葉から推測するなどして、一番近い音を作り出したのです」

 このような他の分野の研究者との連携は、今の研究には不可欠。とくに河江さんの古代エジプトの研究では、ほかに最新テクノロジーとの連携によっても、さまざまな成果を出している。

 現在取り組んでいるピラミッドの構造に関する研究も、そのひとつだ。河江さんとタッグを組んで、その研究をバックアップしているのは、ドローンを用いた写真測量だという。

「ドローンによってさまざまな方向から撮影された写真データを、リアルな3Dに変換するフォトグラメトリーと呼ばれる技術を用いた研究です。最新技術を使うことで、これまで得られなかったデータが取れるようになった。その結果、これまでわかっていなかった、ギザのピラミッドの内部の構造が明らかになってきたんです」

《カノプス壺と蓋》(4体)ミイラ作りの際、人の臓器を入れておく壺。妙なかわいさでグッズ化も/前664~前525年またはそれ以降(写真:Brooklyn Museum)
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近年未知の空間も発見