そんなリフォームが済んでから、すでに30年弱経つ。月日が経つのは早い。
数年前に週刊文春の「新・家の履歴書」というコーナーにお呼びがかかった際、担当者から「簡単なイラストで良いのでお住まいだった家の間取りを描いていただけますか?」と依頼された。それを元にイラストレーターさんが清書をし、あのお馴染みのコーナーが出来上がるという。リフォーム前の我が家を描こうと、30年近く前の記憶を呼び戻しペンをとると、ビックリするくらい筆がすすんだ。
まさに老眼
大人になってから新しくなった今の実家より、幼いときから住んでいたボットン便所の我が家のほうが思い入れがあるのは当たり前だが、描いてると「あぁ、ここの柱はマジックの跡や傷だらけだったな」とか「この客間でいつもゴロゴロしていたな」とか「汲み取りのあとは必ずバケツで水を流していたな」とか、そんなことが頭をよぎるのだ。あんなボロ家でも、なんかよかったな……なんてね。
ひさびさにその掲載誌の我が家のイラストを見てみると、案の定というべきか、細かな部分が老眼でぼんやりして見えにくい。ちょっと目から離すとよーく見える。まさに老眼。
リフォーム前の生家への淡い想いなんて、老眼で見る我が家のイラストとそんな変わらないのかもしれん。すこーし距離をおくと「よく見えて」、あんまり近づいて見ると「ダメだこりゃ」。今、住んでないから、ノスタルジーに浸れるのだな。
「治らない老眼で見る青き日々、ほどよい距離が懐かしくもあり」
しかし、老眼てホントに治らないんですかねーーー?
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