春風亭一之輔・落語家
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落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「リフォーム」。

 私ごとながら、とうとう昨年から老眼が始まった。やはり50が近づくといろんなところが傷んでくるものだ。

 「老眼が一番先に来るね」と同業の先輩たちは言っていた。それも嬉しそうに。老眼到来の旨を告げるとこれまた嬉しそうに「やっぱり来たろう?」と返される。「はい、やっぱり来ました」と言ってる私も半笑い。べつに老眼になって嬉しくはないが、まぁ来るものがやはり来たという……ほっとしたかんじというべきか。

 遠近両用メガネが要るだろうか。まだ必要ないかな。いっそのことレーシックの手術をしてしまえばよいのか。いわば眼球のリフォームだ。ちょちょいと手を入れればすぐに快適な生活が送れるのだから……なんて今、調べてみたら、老眼はレーシックでは治らないらしい。どうやら老眼とうまく付き合っていくしかないらしい。

 身体は家屋のようにはいかないものだ。

いよいよもうダメ

 私が大学入学のために上京してすぐ、実家がリフォームされた。最初の年の正月に帰省して驚いたなぁ。「オレが居るときに直してくれよ」と言いたくなる。末っ子がようやく片付いた、というちょうどいいタイミングだったのかもしれない。

 当時、築30年余りで平屋一戸建て。30年も経つといろいろと不便・不都合なところが出てくる。

 そもそも以前から玄関の土台の木がシロアリにやられていた。叩くとコンコンと乾いた空洞っぽい音が響く。何年もシロアリが食い散らかした縁の下をちょっとずつ直していたようだが、いよいよもうダメ、となったらしい。

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