子育て世帯への支援ばかりが目立つが、単独世帯の割合は2020年に38.0%。50年には44.3%に上昇するとされる。支援や制度のあり方の見直しが迫られている(写真:Getty Images)
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 国会で議論が進む「103万円の壁」や「教育無償化」も、子育て世帯の負担軽減が眼目。会社でも、育休や時短勤務の人の代わりに働く独身には仕事のしわ寄せが来る、といったモヤモヤを抱える声も。AERA 2025年2月17日号より。

【図を見る】25年後には単独世帯が4割を超える

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少子化と働き手不足が深刻化する中、「仕事と子育ての両立」支援は、どの企業も高い優先度が求められている。国会で議論が進む「103万円の壁」や「教育無償化」も、子育て世帯の負担軽減が眼目なのは言うまでもない。

 ただ、こうした社会の流れにモヤモヤを抱える人もいる。AERAが昨年12月に実施したアンケートでは「選挙の候補者のスピーチも子育て支援の視点ばかり。独身で一生懸命に生きている人たちにもっとスポットを当てたりフォローしたりしてほしい」(東京都・52歳)、「独身は損している気がする。国や地方の手当の類いを享受できたことはありません」(東京都・会社員・50歳)、「結婚と出産をしていない人は引き継ぎの仕事が増える一方。さらに時短の人に気を使わないといけない上に、不満も口に出せない」(大阪府・会社員・49歳)といった声が寄せられた。

 これらの回答からは、子育て支援は必要だと頭では理解していても、どこかで不公平感がぬぐえない、という心情がくみとれる。この「分断の芽」ともいえる感情は、今の日本社会のあちこちにくすぶっている。

「少子高齢化と低経済成長のもとにある日本では、子育てをする人だけでなく、医療や介護が必要な人など様々な人を社会全体で支えていくにあたり、どのような人にとっても個人の負担が大きく感じられる状況が一層進むと考えられます」

 こう指摘するのは、シンクタンク「SOMPOインスティチュート・プラス」の大島由佳上級研究員だ。大島さんは人生の長期化と多様化を踏まえ、特定のライフイベントに対するサポートの要否や有無にのみ着目して議論することには慎重な姿勢を示す。なぜなら、パートナーや子どもを持つ人もいれば持たない人もおり、持つといっても「持っている時期/持っていない時期」「共に暮らしている時期/暮らしていない時期」といった具合に、長寿化する人生の中で同じ個人でも様々な状況が生じると考えられるからだ。

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