「口外を控えてほしい」
こうしたトラブルが続く中でも、同社は営業を続けていた。同社を通して2023年に娘のカナダ留学を始めたという家庭は、カナダに行ってまもない5月に受けとった同社からのメールに驚いた。年明けにはすでに学費とホストファミリー費用10カ月分を同社に支払い済みだったのだが、メールには、会社がコロナ禍と円安の影響で資金難となり、学費やホストファミリーへの支払いに滞りが発生していると書かれていた。ただ、カナダに本社を置く別のエージェントと業務提携を行ったため、追加費用なしで留学を続けられるという説明があった。
しかしその後、ウエストコースト社は助け船を出してくれたエージェントとの間でもトラブルとなり、業務提携話は白紙に。23年9月には再び保護者説明会が開かれ、10月分からのホスト費用を保護者の方で立て替えてほしいという説明があった。その後、ウエストコースト社から保護者宛てに送られたメールには、おわびの言葉と共に返金のためには営業利益を生む必要があり、金銭トラブルの件が表沙汰になれば返金が難しくなるので口外を控えてほしいという内容の文言が入っていた。
立て替えは利用者からすると実質的な二重払いとなる。取材で手に入れた情報によると、ある家庭のホームステイ費用は日本円でおよそ月13万円、10月からのホームステイ費用はここからさらに上がるという話だった。立て替えができずに帰国を余儀なくされた留学生も多く、25年1月現在、まだ費用の戻らない家庭もある。
AERAは昨年12月、一連のトラブルについてウエストコースト社の代表に取材の申し入れと質問事項を添えたメールを送ったが、「1月半ばに説明する」との返信があって以降、再度連絡しても返事はなかった。
留学トラブルに関する弁護経験も豊富な外海(とのがい)周二弁護士は「すでに破綻している会社の場合、現実的にお金が戻る可能性は低いと思いますが、まだ営業をしている会社の場合は途中で帰国となった際に留学の残期間に応じた一部返金を求めることができる場合があります」という。たとえ契約書に自己都合による帰国の場合は返金しないという文言があっても、返還が認められたケースもある。とはいえ、訴訟は時間も心理的負担も大きく、言葉の壁もあり、訴えを起こす保護者は少ない。