AERA 2025年2月17日号より

 たいしたことじゃないと思い言わなかったという前置きで始まった息子の話に驚いた両親は、まさかと思って書類を確認した。エージェントから受け取った書類には確かにB校の名前が載っていた。母親は息子がカナダへ行った後にも一度、エージェントが用意した連絡用LINEを通して学校名を聞いた覚えがあったため、その文面も確認したが、そこにも確かに「B校」と書かれていた。

 なぜそんなことになったのか。母親が息子に聞くと、入学前日、エージェントのスタッフから「あなたは明日、C校だからね」と口頭で新しい学校の名前を伝えられたという。だが集合場所のC校の体育館に行くと、他の生徒が次々と名前を呼ばれて体育館を後にする中、息子は名前を呼ばれることなく最後の一人になったというのだ。

自力で交渉し席を確保

 息子が学校事務所に駆け込むと、「あなたの入学手続きは行われていない」と告げられた。息子はエージェントの名前を出し、すでにお金も払っているので、問題があるならエージェントに言ってくれと自力で交渉、自分の席を確保したのだと話してくれた。驚いた母親がこれは事実なのかとエージェントに連絡すると、こちらの手違いで連絡もできずに申し訳ない、との返答があった。

 取材を進めると、この会社を通してカナダに留学したほかの家庭でも、希望と違う学校の入学許可書が届いたり、いきなり学校を変えられたりするというトラブルが起きていた。前出の家庭の場合、子どもの英語が堪能で、行動力もあったため、自力で解決できたのだがこういう子どもばかりではない。

 問題は入学時のトラブルだけに留まらなかった。利用者側が支払ったはずの学費やホームステイ代金が渡っていないという問題も起きていた。ある家庭は学校からの手紙でその事実を知り、ある家庭はホストファミリーからの連絡でトラブルを把握した。

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「口外を控えてほしい」