ずさんな業者が野放し
海外留学に詳しい一般財団法人活育財団の日野田直彦共同代表は、今回のケースは未成年の留学のため金銭トラブルもさることながら、他にも見過ごせないことがあるという。
「入学する学校がいきなり変わったというのは大きな問題です。公立学校は学区により治安もかなり違います。悪さのレベルも日本とは比べものになりませんから、よほど知っている地域の学校に入れる以外は通学路も含めた安全性の確認が必要です」
まして、今回のケースでは、親が許可を出したわけでもなく、別の学校に入学していた。「手違い」では済まされない問題だと指摘する。未成年の留学は成人と比べて気をつけるべきことが多いのだが、今のところ、留学斡旋業に対する規制や決まりは特になく、ずさんな経営や対応が野放しになっている。
規制がないことによる問題は金銭トラブルについても言える。留学は旅行業法に則って企画ツアーとして募集をかける「短期留学」と、旅行業法の範疇外となる「長期留学」などがある。前者は旅行代理店しか扱えず、旅行代理店を開くには国家資格の旅行業務取扱管理者の取得や、営業保証金、弁済業務保証金など、万が一の場合に消費者を救うためのお金を用意することが義務づけられている。そのため、業者が倒産した場合でも消費者は一定の還付金を受けられるようになっている。ところが、長期留学は「斡旋」という名目でできてしまう。留学斡旋業の開業には、旅行代理店のような国家資格や営業保証金の義務もない。
国は若者の海外留学を増やそうと事業を展開しているが、留学斡旋の深刻なトラブルから子どもたちを守る法的な規制がないままでいいのか、疑問が残るところだ。
(フリーランス記者・宮本さおり)
※AERA 2025年2月17日号
![](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/d/800m/img_3dad5b955a6525e33c7fc125ac4dbc97674138.jpg)
![](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/e/8/846m/img_e8047952f87695e41fc0279845894017740161.jpg)