かとう・けんた/1966年三重県生まれ。リクルートなどを経て、2000年オールアバウトの設立に参画。11年エンファクトリーを分社設立して現職(写真:本人提供)
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 2011年の創業以来、「専業禁止」を掲げるのが、インターネットサービス事業を展開する「エンファクトリー」(東京都千代田区)だ。社員に副業を推奨しながら増収を続けてきたという加藤健太社長に14年間を振り返ってもらった。AERA 2025年2月10日号より。

【図を見る】副業する人が増えている 65歳以上が最多!

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 誤解のないよう最初にお断りしておきますが、私たちは副業を強制しているわけではなく、副業の機会を提供してきただけです。ただ、今では副業は特別なものではなく、日常業務と同一線上に捉える感覚が社内に浸透しています。

 現在、副業をしているのは約50人の社員の半分ほど。人気犬種パグの衣類などを生産販売するネットショップを開業したり、社外の仲間と数人で「ハリネズミカフェ」を経営したり。エンジニアやデジタルマーケティングといった専門スキルを生かし、個人事業主として業務委託契約で働くケースも多いです。

 独自の仕組みを挙げると、社内SNSで月1回、社員の副業に関する情報を発信・共有したり、半年に1回、副業実践者の発表会を開いたりしています。発表会には社員だけでなく、独立起業した元社員のほか、取引先企業の関係者も招きます。副業をコソコソやっていると社内で訝(いぶか)しがられてしまいますが、オープンにすれば他の社員たちの刺激にもなるし、応援してもらえる。副業をオープンにすると、本業をおろそかにしにくくなり、本業で成果を出そうというマインドも逆に高まります。

 副業に関する話題は本業の職場では「話しづらい」という声を他社でよく耳にします。せっかく副業を解禁しても、それぞれがどういった経験をし、どのようなネットワークや問題意識を持つようになったのかを社内で情報共有しないと個人も会社も効用を得にくいです。会社の事業や戦略と「個のやりたいこと」をすり合わせていくことがより大事になるなか、副業は有効なツールになります。副業をオープンにすることで、これまで接点のなかった業界から得た情報が社内にフィードバックされ、それが蓄積され何かと結びつくと新規事業や新規サービスにつながることも少なくありません。

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身近な人の影響を促す施策の必要性