飛行機に乗ると、上昇中や降下中に耳が痛くなったり、肌の乾燥を感じたことはありませんか?
これは航空機の機内環境が、地上に近い状況を作り出しているものの、地上より気圧が低く、乾燥しやすい環境にあるからです。なぜ気圧を低く、そして乾燥させる必要があるのか?探っていきましょう。
そもそも気圧とは
上昇・降下中に耳が痛くなったり、上空でポテトチップスの袋がぱんぱんに膨らんだりするのは気圧が関係しています。
気圧とは、空気の重さによる圧力のことを言い、hPa(ヘクトパスカル)という単位で表します。ある地点からみて、上空に存在している空気の量が多いほど気圧は高くなります。富士山のように地上より高い所は、上空の空気が地上より少ないため、気圧は地上より低くなります。地上にいる時を1気圧と表します。
富士山山頂や飛行中の機内でポテトチップスの袋がパンパンに膨らむのは、袋の中の気圧が外の気圧より高くなるからです。
上昇・降下中に耳が痛くなるのも同じで、気圧の変化によって生じます。地上では体内と体外の気圧が1気圧で釣り合っていたのが、上昇中は内側の気圧のほうが外側よりも高くなるため、鼓膜が外側に膨らむことで、降下中は外側の気圧のほうが内側よりも高くなり、鼓膜が内側に押し込まれることで、耳が詰まったように感じたり、痛みを感じることがあります。
飛行中に耳が痛くなった場合は、つばを飲みこむ、あくびをする、飴をなめるなどが有効です。
巡行中の気圧は富士山5合目と同じ(0.8気圧)くらいに
飛行機は、上空約10000mとエベレストよりも高いところを飛ぶため、巡行中は0.2気圧程と地上の1/5、気温は-50℃と過酷な環境の中を飛行しています。しかし、飛行機の客室は、気圧を調節する装置とエアコンによって、地上に近い環境に保たれています。
一般的には、巡行中の機内は0.8気圧くらいの気圧に保たれています。これは富士山5合目と同じくらいの気圧になります。
上昇中や降下中は、機内にいる人が気圧変化によって不快感を感じないように、システムで制御しながら徐々に機内の圧力を変化させています。
なぜ0.8気圧に? 地上と同じにはできないの?
それではなぜ、機内の気圧は約0.8気圧になっているのでしょうか?
地上と同じ1気圧に保てば、耳が痛くなったりしなくて済むのでは?と思いますよね。しかし、そう簡単にはいかないのです。
気圧の低い上空で、機内を地上と同じ1気圧に保とうとすると、その大きな気圧差に機体が耐えられるよう頑丈に作る必要があるため、機体重量が重くなってしまいます。機体重量が重くなるとその分燃費が悪くなったり、客席数が少なくなったりと色々なデメリットが発生します。なるべく機内の気圧を地上に近付けられるよう機体を丸くし力が均等にかかるようにしたり、従来のアルミニウム合金の機体からより軽くて丈夫な素材である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)にするなど工夫がされています。最新の機材であるBOEING787やAIRBUS A350などでは、機内の気圧を従来の飛行機より地上に近い環境にすることが可能になっています。
なぜ乾燥するの?
また、機内で「乾燥」を感じたことはありませんか?
この乾燥にも航空機特有の理由があります。湿度をあげると、機内の気温よりも外の気温が著しく低いため、壁付近では機内の空気が冷やされることで水滴が発生します。この水滴が航空機のシステムに影響を及ぼす恐れがあるため、機内の湿度は抑えられています。最新の機材では、機内でも快適に過ごせるよう加湿器を搭載しているものもあるようです。
まとめ
今回は機内の環境についてみてきました。新しい飛行機が出るたびに、徐々に機内の環境は地上にいる時に近付いてきていますが、上空では気圧が低く乾燥するのは避けられません。快適に機内を過ごせるよう乾燥対策など心がけると良いでしょう。