東京電力福島第一原発の事故から14年。廃炉作業が続く中、昨年、初めて燃料デブリの試験的取り出しに成功した。しかし、その量はあまりにも少ない。AERA 2025年2月3日号より。
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14年前、世界に類を見ない原発事故を起こした東京電力福島第一原発。100メートルほど先に、事故を起こした1~4号機の原子炉建屋を望む高台に立った。
「今まさしく、2粒目の燃料デブリを取り出す準備を進めています」
案内役の東京電力福島第一廃炉推進カンパニーリスクコミュニケーターの高原憲一副所長は、2号機を指さしながらそう話す。1月中旬、記者は取材団の一員として、廃炉作業が続く第一原発の構内に入った。
2011年3月11日。東日本大震災の津波による停電で、原発内の電気の供給が途絶え原子炉を冷却できなくなり、原発全6基のうち運転中の1~3号機で、核燃料が溶け落ちる「炉心溶融(メルトダウン)」が起きた。さらに1、3、4号機で「水素爆発」が起き原子炉建屋が吹き飛び、大量の放射性物質が大気中に放出された。同年12月、国と東電は廃炉のロードマップ(工程表)をつくった。廃炉完了は「30~40年後」とし、「2051年までに廃炉完了」を目標に掲げた。
「廃炉の本丸」への着手、貫通部の堆積物で3年遅れ
その廃炉作業で最難関と言われ、東電が「廃炉の本丸」と位置づけるのが、事故で溶け落ちた核燃料「燃料デブリ」の取り出しだった。総量は約880トン。浴びると、死に至る極めて高い放射線を放つ。
昨年11月、その燃料デブリの試験的取り出しに2号機で成功したのだ。全長約22メートルの「釣りざお式装置」を貫通部から原子炉格納容器に挿入し、回収した。
「本格的な取り出しの工法を決める上で欠かせないデータを得ることができます。我々としては1歩大きな前進だったと思っています」(高原氏)
とは言え、採取できた量はわずか0.7グラム。総量880トンとされる燃料デブリの「12億分の1」。耳かき一杯しかない。