トランペットや太鼓などの鳴り物が日本の応援団の基本スタイル

選手の声が聞こえてスタンドから笑い声

 ただ、鳴り物応援でかき消されてしまう音がある。コロナ禍の無観客試合から通常の応援スタイルに戻る間に、観客は来場するが鳴り物や声出し応援は禁止された時期があった。トランペットや声出しの応援がない試合を生で体験し、新鮮に感じたファンは多かっただろう。打球音や投手が投げるときに発する声、捕手のミットに球が収まる音などが球場内に響き渡ったからだ。

 選手の発した声が話題になったこともある。20年8月21 日に行われたロッテソフトバンク戦(ZOZOマリン)。ソフトバンク・柳田悠岐がスイングを途中で止めたが、バットに当たってボテボテの打球が三塁に。柳田は「ヤベ!」と叫ぶと一塁に全力疾走したが、三塁ゴロに倒れた。その声がスタンドからもはっきり聞き取れたため、どよめきと笑い声が漏れた。

「大谷の打球音を聞いてほしかった」

 プレーしている選手はどう感じるだろうか。現役時代にセ、パ両リーグでプレーした選手はこう振り返る。

「打席に入ると集中しているので応援歌を聞く余裕がないですが、応援が球場の空気を変える力を持っていることは間違いないです。特に甲子園阪神ファンの応援は凄かったですね。走者が一人出るだけで地鳴りのような応援になるので、圧を凄く感じました。でも、無音試合を開催してほしい思いもあります。バットに当たる音って選手によって違うんですよ。多くの選手はミートすると「カン!」って乾いた音がするんですけど、大谷翔平は『カシャン!』とモノが破裂したような音がしました。あんな音は野球をしてきて聞いたことがなかった。メジャーで活躍してその音が話題になりましたけど、日本ハムでプレーしていた時も子供たちにその音を聞いてほしかったですね」

 スポーツ紙デスクは、「鳴り物禁止デーを年に数試合導入しても面白いと思います。グラウンド上の音を楽しみたい方は多いですし、応援が好きなファンも野球の魅力を再認識する機会になるでしょう」と提案する。野球ファンの裾野を広げるためにも、「ノー鳴り物デー」の導入を各球団で検討してみてはどうだろう。

(今川秀悟)

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼