さく・やながわ/大阪大学文学部演劇学・音楽学専修卒。米国シカゴを拠点にスタンダップコメディアンとして活躍。アフリカを含む、世界10カ国以上でツアーも(写真:本人提供)
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 ひとりでステージに立ち、客席とやりとりしながら笑いを取るアメリカ発祥のコメディー「スタンダップコメディー」。そのプロとして米国で活躍するサク・ヤナガワさんは、いかにして舞台でも通用する英語力を身に着けたのか。AERA 2025年2月3日号より。

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 大学生のとき、テレビでたまたま見たスタンダップコメディアンに心を奪われ、次の日ニューヨークに渡ったのは2013年のこと。その後、コメディーの本場シカゴに拠点を移し、米国で活躍する人気コメディアンのひとりとして、その名を知られるようになった。サク・ヤナガワさん(32)だ。

 プロのコメディアンとしても通用する英語を話せるようになったのは、中学時代に英語のネイティブふうの発音と発話にとことん厳しかった教師と、日本の大学にいたときに一緒に学んだ世界中からの留学生、それから短期海外留学のおかげだったと振り返る。そして何より、サクさんの英語を成長させたのが、コメディアンになってからの英語の勉強だったとか。

「勉強といっても、僕の場合は英語の新聞8紙をすべて読むこと。コメディアンの資格があるとしたら、その社会と繋がっていることだと思うんですよ。だから英語の勉強より、その社会とつながることが目的でした」

 それもただ読むだけではなく、忘れないようにラインマーカーを引いていくのが“ヤナガワ式”英語。最初のころは朝ごはんの時間から読み始めた8紙が、15時のおやつの時間になっても読み終わらないほど、時間がかかったこともあったそうだ。そしてサクさんの場合、有名になった今も、同じルーティンを続けているのがポイントとなっている。

 そして何より、サクさんの英語力を飛躍的に磨いたのは、スタンダップコメディーの舞台に立ち、人に英語を聞かせたことだった。

「言葉の実年齢というものがあると聞いたんです。例えば丸一日、日本語を話す人を相手に、日本語を話せば、実年齢1日とカウントできる。でも米国に暮らすと、英語を使うのは1日4時間くらいとして、4時間しか実年齢は進まないんですよね」

 ところがこれをすると、英語の実年齢はあっという間に進むのだとか。

「スタンダップコメディーでもいい、プレゼンでもいい。英語で人前で何かを発表するんです。たとえ10分の発表でも、実質何日分もの英語実年齢を増やすことができると聞いたことがありますね」

 そうして手に入れた英語を武器に、サクさんが目指しているのは、全世界で誰もが知るような有名コメディアンだ。雑誌の表紙をひとりで飾り、ネットフリックスでスタンダップコメディーの1時間番組を持つ。そんな大御所も目の前か。

AERA 2025年2月3日号

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