「嫌なことを忘れるのがめっちゃ得意」という女性(撮影/インベカヲリ☆)

世帯年収でいったら低いほう

「うちは世帯年収でいったら、全然低いほうですよ。住宅ローンは35年です。団地もいいかなと思ったんですけど、都の団地は審査が厳しくて、所得基準がすごく低いんですね。子どももいないし、障害がある人が優先されたりするから、応募すらできなかった」

 実憂さんが、生活に満足しながらもため息をつく理由が、だんだんとわかってきた気がする。

 自分で「豊かさ」の中身を決め、何かを選び、何かを諦める。現代日本は、普通に仕事をしただけでは、経済的に満足して暮らせる国ではない、ということだ。

「子どもができたらいいなと思って、病院も行ってるんですけど、なかなか難しいですね」

 話は不妊治療のことに移った。

「私の先生は、『狙う』って言い方をするんですよ。『排卵が近いから、何日と何日を狙って』『はい!』みたいな。病院が終わったら、すぐ夫にLINEして、『この日だよ』『わかった』って。恥ずかしがってるとよくないかなと思って、意図して体育会系のノリにしているところはありますね」

子どもができたら働きたくはない

 実憂さんは、何でもないことのように言っているが、病院では激痛を伴う検査も行っている。前向きに捉えようとしている部分もあるのだろう。

 しかし、子どもができたらできたで、共働きで育てるのは大変そうだ。

「本当にそうなんです。今は、『専業主婦はよくない』みたいな風潮があるけど、『家にいたほうがいいに決まってない?』とか思っちゃいます。私は、母が働いていたので、休みの日に急に仕事が入って託児所に預けられるのがすごく嫌だったんですね。もしも、夫の収入が良くて私が働かなくてもいいんだったら、子どもができたら絶対に働きたくないですね。

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チャーハンが嫌いなことを忘れて