税金の使い方に不満
もちろん、古い価値観は都市部にも存在するし、都市部にも同様の生きづらさを抱える人はいる。都市部の方が生きやすくて、地方の方が生きづらいなどと、一概に語れるような種類の話では決してない。
現に「東京でも、特有の独身の生きづらさを感じますよ」と話すのは、団体職員(41)の女性だ。40歳を迎えたのを機に、「このまま一生、独身でいるかもしれない」と考えることが増えたという女性。老後のためにも少しずつ貯金しているが、「一人で稼ぎ続ける生活への不安は大きい」とこぼす。物価高の影響もあり、ただでさえ高い家賃が今年から値上げになる通達が届いたばかりでもある。
「頑張って稼いだお金も、びっくりするぐらい税金で差し引かれるし、生活費が高い東京で、女性が一人で働いて生活を続けるって厳しいです」
そんな中で、モヤッとした気持ちが胸に広がるのが、子育て支援策の拡充を報じるニュースだ。特に女性が住む東京都では、豊かな財政力を背景に、全国的にも突出した子育て支援ぶりが注目を集めている。
「都の子育て支援の財源も、結局は都民の税金から出ているわけで、不公平感がすごいと思う。子育て世帯の恩恵は大きいのに、独身の私たちは持っていかれるだけ。無痛分娩の助成も然り、都の税金の使い方は、フラストレーションが溜まる一方ですよ」とこぼす。
一緒に解決していこう
立場や考え方によって、見え方や感じ方が異なってくるのは、どこにいても同じ。都市部と地方は、とかく二項対立で語られがちだが、場所で何かが大きく変わるというより、自分がどうあるかという姿勢の方が大事かもしれない。「地方女子プロジェクト」の山本さんは言う。
「何らかの妨げがあるから、しょうがなく都会か地方かを選ぶのではなく、それぞれの持つ課題が課題として認識されて、一緒に解決していこうという方向になっていけたら良いなと思います。自分にとって居心地が良い環境は何かという視点で、住む場所や働く場所、生き方が選べる社会になったら、どんな人でももっと、生きやすさを感じられるのでは」
(フリーランス記者・松岡かすみ)
※AERA 2025年2月3日号 より抜粋