地方では“女性の幸せは結婚”という価値観、都会では手厚い子育て支援に税金を持っていかれる不公平感を感じるなど、独身女性たちの本音から見える日本社会が抱える課題とは。AERA 2025年2月3日号より。
* * *
昨年、2050年までに若年女性の人口が半数以下になる自治体が全国744に上り、最終的に消滅する可能性があるという推計が発表され、議論を呼んだ(「人口戦略会議」から)。その後、政府がまとめたのが、東京に住む独身女性が結婚のため地方移住する場合、自治体を通じて60万円の支援金を出すという施策だ。批判を受けて頓挫するに至ったが、地方から女性の流出が進むという文脈は時に、「地方過疎化の原因は主に女性にある」と言わんばかりの論調で語られがちだ。
こうした傾向に対し、「女性たちの本音を聞いてほしい」との思いから「地方女子プロジェクト」を立ち上げたのが、山梨県在住の山本蓮さん(25)だ。10~30代の地方出身の女性に、地元を離れる理由や地方の生きづらさについて聞き取りを行い、国や自治体の施策に生かされるよう活動を行っている。
山本さんいわく、聞き取りをした女性たちの多くが地方の課題として挙げたのが、やはり古い価値観の固定化。地元が好きで住みたいという気持ちはありながら、女性=子育て、家庭を守るべきといった昔ながらの役割を押し付けられる空気に息苦しさを感じるという声が多く聞かれるという。
「特に地方では『女性の幸せ=結婚して家庭を持つこと』を前提に、いろんなことが考えられていると感じます。例えば就職説明会でも“女性でもできる簡単な仕事”“女性でも働きやすい会社”という謳い文句で、女性に補助的な仕事を回される現実が見えることも多い。本来は結婚や子どもはそれぞれの価値観で決めること。子育てが障壁にならず、キャリアを継続できるかが大事なはずなのに、企業のアピールポイントがずれている。地方がいまだにそういう環境だから、東京で働いているという女性も少なくありません」