「移転が遅れれば遅れるほど、その分、毎日700万円の税金が維持費として使われることになりますから、あまり延期が長引くとそれはそれでお金の使い方としてどうなのかという意見も出てくるかもしれません。また、移転した築地市場の跡地には、2020年に開催される東京オリンピックの運営をスムーズに行う上で重要な輸送路になる環状2号線が開通する予定なのですが、この工事は築地の移転が不可欠ですから、本当に移転中止となると、大変な騒動になります」

「こうしたことから小池知事は、精査を経て見なおすべきところは見直して、真剣に問題に取り組んだという評価を得て、来年の3月ぐらいまでの移転を決断すると見られていたのですが、盛り土の手抜きが発覚したことで、これがさらに伸びることは確実になってきましたね」

「そもそも本当に白紙を主張している小池さんの側近もいましたから、盛り土の問題で、今後も延期や工事のやり直しなど長期に長引くようなことになれば白紙案も現実味を帯びてきます。その側近のプランは、築地の市場機能を豊洲に一旦移して、そこで仮営業している間に築地市場を改修して元に戻すというものです。この話には、豊洲新市場を建物ごと買い取ってもいいという民間業者がいるというおまけまでついていて、都庁や推進してきた都議会の関係者の間には小池さんが白紙を決断するかもしれないとピリピリムードが強くなってきています」

●盛り土問題が知事の追求に追い風 東京都の巨大利権にメスが入る可能性も

 小池知事と都議会自民党といえば、都知事選の最中から確執が伝えられてきたが、自民党には小池対抗策はあるのだろうか。そもそも今回の移転延期も、裏では都議会自民党との間で話がついていたという噂もあった。つまり延期表明で一旦は知事に花を持たせるが、その後は疑惑追求の手を緩めることで知事が自民党に譲歩するといったものだが、実際にそんなことがあるのだろうか。

「それはありませんね。今は、都議会自民党は様子見をしているというところでしょう。ただし、小池さんが1年も2年も延期するとか白紙にするなどと言い出したら、議会の自民党など推進派は反対に回ります。ポイントとなるのは、来年6月に予定されている都議選です。都議会自民党は、この都議選にプラスかマイナスかで判断をしています。今は小池さんの方針に都民の支持が集まっていますから、多少のことは譲歩した方が得策だと考えている都議が多いようです」

 地方政界では、大阪の大阪維新の会や名古屋の減税日本など、知名度の高い改革派知事を支援する地域政党が大きな流れとなっており、「小池新党」ができるのも時間の問題という見方もある。ただし東京における地域政党の誕生は、小池知事が都議会自民党とどこまで本気でやり合い、その利権を明らかにする気があるかにかかっている。

 築地移転延期に関しては、都議会自民党の切っ先を制するうえでのケンカ上手の小池都知事のパフォーマンスという向きも強かったが、このタイミングで盛り土問題が発覚したことで事態は急変。小池都知事による都庁と都議会の利権追求の大きな追い風となった。このまま知事が、都議会自民党との対決におけるイニシアチブを握り続けることができるなら、完全にブラックボックス化していて、利権構造がまったく見えなかった東京都の巨大利権が白日の下に晒される可能性も高くなってきたと言えるだろう。