加えて、対象集団はアメリカ人の医療従事者であり、それが日本人に当てはまるかはわかりません。使った統計モデルもさまざまな仮定を置いており、その仮定が正しいか証明する術はありません。このように、一つの論文には多くの限界があり、なかなか決定的な科学的知見というものはすぐには得られないものです。「まさに自分に当てはまるエビデンス」というのは、実際なかなかありません。

「思ったより体重のコントロールが大事」

 そんな中でも、自分が実生活に有用だと思う知見を吸収しておく、というのは、自分の健康だけでなく、科学リテラシー向上のためにもとても大事な習慣だと考えています。

 今回の研究は、「高血圧予防のために気を付けることは塩分摂取だけでない」「思ったより体重のコントロールが大事だ」ということを打ち出したことが大事なのでした。科学は研究者の業績を上げるためにあるのではなく、実生活に還元されるためにあります。是非このような知見から科学リテラシーを向上させ、効率的な生活習慣病予防に役立てていただけると嬉しいです。

(浜谷 陸太 : 医師、疫学博士)

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