24歳の樋口は、悲願の出場を果たした2022年北京五輪の翌季は右すねの疲労骨折もあり、10月以降は休養。昨季は復帰したものの、実力を出し切れなかった。しかし今季は、スケートアメリカでGP初優勝を果たすと、フランス杯でも2位に入りファイナルに進出(4位)。そして目標にしてきた全日本選手権では銅メダルを獲得し、世界選手権代表の座を射止めた。
樋口は北京五輪では武器となったトリプルアクセルを今季は封印しており、完成度の高い演技を滑り切るスタイルで結果を出してきた。特にフリーでは樋口の強みであるエモーショナルな表現が印象的で、経験豊富な実力者が本格的に戻ってきた印象だ。
また世界選手権代表の補欠である松生、住吉りをん、吉田も、それぞれ強みを持つ。20歳の松生は不調を乗り越え、今季はGPファイナルに進出、全日本選手権でも5位と健闘。その魅力は、伸びやかなスケーティングだ。21歳の住吉は国際スケート連盟公認大会で日本女子として初めて4回転トウループを成功させたスケーターで、総合力も高い。また昨季銅メダルを獲得したファイナルに今季も進出した19歳の吉田は、トリプルアクセルと独自の表現を併せ持つ。
約1年後に迫ったミラノ五輪のリンクに立つ日本女子は、誰になるのだろうか。(文・沢田聡子)
沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」