週刊誌の編集部に乗り込んで凄むようなことはしないものの、代わりに、淳子は“NG媒体”を指定することでも業界では有名だった。NG媒体というのは、取材をいっさい受けない週刊誌のことで、淳子は気に入らない記事を書いた週刊誌をことごとくNG媒体にしたのだそうだ。
すると、新しく始まるドラマ、あるいは新作映画の紹介記事を某週刊誌が企画したとする。淳子が出演しているドラマだ。編集部としては製作発表の模様や出演者のインタビューで記事を構成するつもりでいるが、その雑誌を淳子がNG媒体に指定しているため、彼女を取材することができない。だから、できあがった記事には、他の出演者の写真やコメントは載っているのに彼女だけ載っていないことが多々あったりする。
テレビ局の広報部員としては、新しく始まるドラマはできるだけ雑誌に紹介してもらいたい(=少しでも視聴率に結びつけたい)と思っているが、淳子が取材を拒否するので番宣が中途半端になり、他方、記事を作る側の編集部や記者さんも重要な役どころの淳子が取材に応じてくれないので記事の構成に頭を悩ませる。
そういった意味では、淳子も“問題児”ではあった。もちろん、あの雑誌嫌い、この雑誌はイヤとNG媒体をつくる俳優女優さんは彼女だけではないが。
といった背景があるので、裕太の事件を記事にした週刊誌にざっと目を通しただけで、その“書きぶり”に差違があることがよくわかる。淳子を擁護するトーンが強い媒体もあれば、事件をかなりツッコんで書いている雑誌または容疑者を悪し様に書いている雑誌もあって、手厳しく書いている雑誌はもしかしたら“NG媒体”にされ、関係が良好ではなかったのかもしれない……、などと勘ぐってしまうのである。たぶんそうだったのだろうけど。
淳子は以前住んでいたマンションの他に、現在住んでいる豪邸があって、さらに二億五〇〇〇万円もする大豪邸をいま渋谷区の一等地に建築中(十月完成予定)で資産はゆうに五億円を超える……、なんてことも書かれているが、もうちょっとうまくメディアとつきあっていたら、ここまで書かれることはなかったようにも思う。
では、夏目‐有吉の熱愛を、なぜワイドショーが黙殺したかというと、こちらはどうやら“業界のドン”が圧力をかけ、日刊スポーツのスクープを握りつぶした――、との話で持ちきりだ。ほんのひと月前には東京都知事選で“自民党都議連のドン”が話題になったが、今度は芸能界のドンである。二〇一八年の大河は『西郷どん』で、亡くなった大橋巨泉は“倍率ドン”だった。芸能デスクが言う。