上脇教授も「女性社長(折田氏)のnoteを拝見して、これはどう考えても選挙に主体的に、かつ、裁量のある、戦略的なPR活動を行ったことは明らか」と語った。
ただ、折田氏を告発することは本意ではなかったという。会見で郷原弁護士はこう漏らした。
「われわれとしては斎藤氏の処罰を求める気持ちが中心で、折田さんにはむしろ全面的に捜査に協力をして、捜査機関が真相解明に漕ぎつけられるようにしてもらいたい。積極的に協力されれば、処罰はしないで起訴猶予にしてもらってもいいんじゃないかと思っているぐらいです。
ただ、買収罪と被買収罪は対向犯といって、両方セットで成立する犯罪ですから、折田さん側の態度がまったく不明な段階で、折田さんの処罰を求めないということは、やはりちょっと説明がつかない」
まだ続く知事選の余波
郷原弁護士と上脇教授が、斎藤知事らの告発状送付を発表した翌3日、兵庫県議会の12月定例会が開会した。
9月19日の不信任決議から約2カ月半ぶりに議場へ戻った斎藤知事は、3年余り前の初めての県議会での所信表明と同じフレーズを口にした。
「兵庫県のさらなる発展、県民生活の一層の向上に向け、希望を持って一心に坂をのぼっていきたい」
司馬遼太郎の『坂の上の雲』を引用しつつ、初心に返って「ワンチームで坂をのぼろう」と県議会や県職員に呼びかけたわけだが、異様な選挙戦の余波はまだ収まりそうにない。坂の上に見えているのは一朶の白い雲ではなく、垂れ込める暗雲かもしれない。(ノンフィクションライター・松本創)
※AERA 2024年12月16日号