奥見司弁護士の会見で報道陣に配布された、PR会社が斎藤元彦知事の後援会宛てに送付した請求書のコピー=2024年11月27日、神戸市中央区

折田氏のことは「SNSに詳しい、選対周辺の支援者」だと認識していたという。街宣の現場に来て、助言やサポートをする議員や経営者も多く、そういう中の一人だったと。斎藤氏が勝ったことで、みんなが「自分がやった」と功名心に走ったこと、折田氏をはじめ、公選法に無知な素人の勝手連だったことが今回の問題につながったと、この関係者は見る。

「SNS運用や動画撮影を無償でやっていても不思議はない。目先の報酬はなくても、斎藤さんが勝てば、あの選挙の広報を担ったという実績になり、将来的なメリットは大きいので」

 だが、「merchu」はSNS運用を本業とする会社だ。自治体などでSNS運用支援業務を多数受注し、今年度は広島県の公募を約1300万円で落札。広島市ではSNS活用プロモーション業務を5年連続で受注しており、契約総額は3212万円に上る。

 それが兵庫県知事選では一転、ポスターやチラシだけを約71万円で受け、本業のSNS運用は1カ月半にわたり、会社ではなく社長個人のボランティアでやったという。常識的に考えて、そんなことがあるのだろうか。

 斎藤氏側の説明には疑問や不自然な点が多い。

知事と社長を刑事告発

 ここに疑問を呈したのが、元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士と、政治とカネの疑惑を追及し続けている神戸学院大学の上脇博之教授だ。

 2人は12月2日にオンライン会見を開き、斎藤氏側が「merchu」に支払った約71万円は、SNS運用など広報戦略を含む選挙運動の報酬だったとして、公選法違反(買収、被買収)の疑いで斎藤氏と折田氏に対する告発状を神戸地検と兵庫県警に送ったことを明らかにした。

 郷原弁護士は、折田氏の改変前のnoteは真実性が高いと見ている。その根拠に、斎藤陣営に近い西宮市議が「陣営がSNSをお願いした方」として、自身のXで折田氏を紹介していた経緯などを挙げて、こう主張した。

「折田noteは基本的に信用できる、真実である。一方、斎藤氏側代理人の説明は極めて疑わしい。概ね斎藤氏の罪責を否定する虚偽説明だと判断しています」

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