希望する配慮を得るために必要なのは、「すでに配慮を受けていること」。学校生活で受けていた配慮は、入試でも認められやすい
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 発達障害のある子どもたちが、公平な受験環境を得る「合理的配慮」。2024年4月、改正障害者差別解消法が施行され、国公立校だけでなく私立校でも受験で合理的配慮の提供が求められることになった。発達障害学生の大学受験の実情とは──。AERA 2025年1月20日号より。

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 大学受験での配慮は、どうなっているのだろうか。都内で発達性読み書き障害(ディスレクシア)専門の英語塾を主宰する、成田あゆみさんに話を聞いた。成田さんは、学習障害を持つ大学受験生のサポートを行っており、その数は累計100人以上にのぼる。大学入学共通テストと国立大学の英語の試験で、「代読者による読み上げ配慮」の実現に、導いた経験もある。

「大学受験生が配慮入試に臨む場合大切なことは、まず、共通テストで配慮を得ることです。なぜならほとんどの大学で、共通テストで認められた配慮がそのまま許可されるからです。また、共通テストの『受験上の配慮案内』には、診断書の用紙が収められています。医師の診断が必須ということです」(成田さん)

 そして共通テストで希望する配慮を得るためには、高校で同じ配慮を受けておくことが必要だという。成田さんは言う。

「学習障害の場合、多くの生徒が希望するのは『1.3倍の時間延長』です。そのためには高校の定期テストでも、同じ配慮を受けておく必要があります」

実力発揮できる環境を

 ただ、延長もいいことばかりではない。共通テストは、25年度から新たに「情報(60分)」が加わり、国語と数学(2)の試験時間も、それぞれ10分ずつ延長される。

「全科目を1.3倍にすると、疲れすぎて頭が働かなくなってしまいます。本当に延長が必要なのか、模試などで見極めた方がいいでしょう。大学入試センターに事前相談をすることで、科目別の時間延長も可能になりました」(成田さん)

 共通テストでは、別室受験などの一般的な配慮の他にも、「座席の指定(前、後ろ、真ん中、窓側、壁際等)」「試験時間中に座位と起立位を繰り返すこと」「眠った場合に監督者等が起こす」なども求めることができる。なぜこのような配慮が認められているのだろうか。

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