発達障害のある学生は就職活動でつまづく人も少なくない。各大学も支援に力を入れている(写真:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 発達障害がある学生は、その特性から就職活動で困難を抱えるケースが少なくない。学生は何に苦戦しているのか。大学はどう支援しているのか。早稲田大学キャリアセンターを取材した。AERA 2025年1月20日号より。

【図表を見る】発達障害の特性に合わせた柔軟な配慮の例はこちら

*  *  *

 発達障害がある大学生・短大生・高専生は2023年5月時点で1万1706人。5年間で1.7倍に増えたが、発達障害のある学生に進路・就職の指導をするのは、1168校のうち269校にとどまる(独立行政法人日本学生支援機構の調べ)。

 早稲田大学大学院の理系修士2年の学生は、小学5年生のとき、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断された。算数が得意だが、国語はあいまいに感じる。得意教科と不得意教科の差が激しかった。

 就活で落とし穴だったのは、よく言われるこのアドバイス。

《特定の企業にとらわれず、いろんな企業を見ましょう》

 学生は言う。

「言葉通り受け取ってしまうんです。企業は300万社以上あるといわれますが、本当に全部の企業を見ようとしてしまって」

 学生は数字にこだわりがある。気づけば就活のテーマが、「誰よりも知っている企業を増やすこと」になっていた。

「たくさんの企業を調べて、どの企業にも興味が湧かなくなりました」

ロールモデルの卒業生から

 そんななか、学生はキャリアセンターに週に一度、個別相談に訪れた。エントリーシートの添削、面接の練習を重ねた。これが情報の整理に役立った。

「この会社はどんな会社か一言で考えるようになりました」

 障害者雇用で企業の経理関連職に内定した。数字が得意なことと職種がマッチングした。

 早稲田大学キャリアセンターの障害のある学生や体調に不安のある学生の個別相談は相談員固定で対応している。自己理解や障害理解、自身でできる対処と求める配慮を一緒に考えたり、エントリーシートに書くことの言語化をサポートしたりしている。担当の篤田美穂さんは言う。

「学生にどのような情報提供をして、どのような支援をするか、担当者自身も学びながら考えているところです。学内の関係部署と連携しなければならないと思っています」

次のページ
企業の情報が見つけにくい