霜降り明星のせいや
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 16日放送の「ぐるナイゴチ26開幕!新メンバーは2人!2時間SP」(日本テレビ系・木曜午後7時)で、新メンバー2人が「霜降り明星・せいや」と「白石麻衣」だと明らかになった。そんな霜降り明星・せいやにまつわる過去の人気記事を振り返る(「AERA dot.」2024年12月7日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時のものです。)

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 世の中には「主人公タイプ」の人間というのがいる。単なる出しゃばりや目立ちたがり屋のことではない。圧倒的な才能と人間的な魅力を備えていて、自然と人の輪の中心になってしまうような人間である。

 わかりやすい例で言えば、ドジャース大谷翔平だ。どんなフィクションでもあり得なかったような現実離れした大活躍を続けている彼は、自ら伝説を更新し続けている。

 お笑いの世界では主人公タイプの芸人は意外と少ない。個性豊かなさまざまなキャラクターの芸人が存在しているが、真ん中に立つのが似合うような人はあまりいない。お笑いという営みには世の中を斜めから見るような感覚が必要とされるので、まっすぐな生き方を貫くような人がなかなか出てこないのかもしれない。

 最近の芸人の中で、この人こそは典型的な主人公タイプだなと思うのが霜降り明星のせいやである。彼の圧倒的な才能と努力や人間的魅力は、多くの人が認めるところだろう。相方の粗品と並んで史上最年少で『M-1グランプリ』優勝を果たし、その後もテレビ、ラジオ、YouTube、ライブなどで活躍を続けてきた。小柄で小太りで天性の華やかさを持っていて、熱いことを照れずに言い切る彼は、少年漫画の主人公のような存在感がある。

壮絶ないじめも物語のよう

 11月25日に出版された彼の半自伝的小説『人生を変えたコント』(ワニブックス)が話題になっている。現時点ですでに発行部数10万部を超えていて、大ヒットを記録している。せいや自身が高校時代に壮絶ないじめに遭いながらも、笑いの力でそれを乗り越えていった経験がつづられている。

 せいやがいじめを乗り越えたエピソードは、テレビなどでも断片的には語られていた。本人はその話の内容を「いつか本にしたい」と意気込んでいた。それが今回ついに実現したことになる。

 本を読んだ感想としては、現実の出来事であるはずなのに、物語のような話だと思った。壮絶ないじめに遭っていた少年が、周囲の人々を徐々に巻き込んでいき、笑いの力で逆境をはね返していく。あまりにも正しく、美しく、まぶしい。その少年がのちにお笑いの世界でどんどんのし上がってスターになっていくというのも、あまりにできすぎた話だ。

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恐るべき客観性