創作活動の原点は東日本大震災
先ほど、芥川賞を受賞したときのシミュレーションの話をしましたが、小学5年生のころに村上春樹さんの『1Q84』を読みました。その中に芥川賞を取るかもしれない少女の話が出てきて……それを読んで、自分も練習をしておかないといけないなと。なので、ここに座るのはそういう意味では 2度目です(笑)。
『ゲーテはすべてを言った』には、ゲーテの言葉をたくさん使わせていただいたので、本当、ゲーテには返しきれないものがたくさんあります。芥川龍之介は、小学6年生の時に初版全集を知り合いからいただいて、本の魅力に取りつかれたということあります。
今の気持ちをゲーテの言葉で表現するならば……うーん、そうですね、ゲーテが死ぬ前に言った言葉で「もっと光を!」があるのですが、僕は今、光はいらないなっていう感じです(笑)。
たくさん楽しく話しをさせてもらってありがとうございます。これからもまだ未完成の物語とかたくさんあります。 1つ1つ完成させていきたいと思ってます。また、今回は単行本が出ますので、たくさんの読者の方に出会いたいなと思ってます。
3月11日、10歳で経験した東日本大震災の記憶はまだ鮮明に残っており、何回も繰り返して思い出してもいる。そしてその風景が、創作活動の原点になっている、と話す。
「宿題をしていたときに大きな揺れを感じて、こたつの中にもぐりました。一時避難中は、自分が描いていた漫画の原稿用紙やアイデアを書き溜めた自由帳、岩波新書にトルストイ、聖書などを詰め込んだ大きな青いバッグを背負っていました。一緒に避難した、私の全てが詰め込まれていたあのバッグの重みが、私に小説を書かせてきたように思います」