待機中に大学のオンライン授業を受けるソフィア。大学では国際法やウクライナの法律を勉強しているという(写真:横田 徹)

学業に専念してほしい

「ロシア軍がウクライナに侵攻している今、私には最前線に行かないという選択肢はありませんでした。母も祖国の危機を見過ごすことは出来ず、命を懸けて戦っています」

 戦場ではロシア軍のドローンがメディックの車両を優先的に狙う。危険と隣り合わせで戦う兵士の士気に大きな影響を与えるからだ。爆弾を抱いて高速で飛行するFPVドローンに対しては有効な対抗策がなく、11月には友人がロシア軍の攻撃で亡くなったという。母のアーニャは、娘を憂いながらこう話す。

「自分の娘が前線で活動しているのを見ると、私の両親もこんな気持ちだったのかなと思います。正直なところ、母として娘には危険から遠ざかってほしいと思っています。娘は子どもの頃から政治、社会奉仕などに興味を持っていて、高校を優秀な成績で卒業しました。できることなら学業に専念して、今後のウクライナ社会に貢献してほしいと願っています。しかし、ソフィアは私が軍人になった経緯を知っています。国を守るために戦場へ行く、あの子を止めることは出来ないのです」

 現在、ウクライナ軍における女性兵士の割合は、アーニャの見解では、約10%。ソフィアのような民間のNGOに所属し、軍の傘下で活動する人も含めると、それ以上に及ぶそうだ。

 東部の要所、クラマトルスクで数カ月ぶりに会ったアーニャとソフィア。市内のレストランでソフィアの好物の寿司を食べながら2時間ほど、つかの間の幸せな時間を過ごした。国を守るために戦場に行くことを決意した母と娘は、別れ際に抱擁をしてお互いの無事を祈り、それぞれの任務へ戻っていった。(戦場カメラマン・横田徹)

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