ウクライナの激戦地リマンでメディックとして働くソフィア(左から2人目)。母のアーニャは軍の将校だ(写真:横田 徹)
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 ロシアがウクライナに侵攻してから、まもなく3年。戦場でウクライナ軍の一員として戦うのは男性ばかりではない。祖国のために戦場に向かった母と娘を取材した。AERA 2025年1月20日号より。

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 戦争が長期化する中、ロシア軍はウクライナ東部で支配地域を拡大している。私は2024年11月、取材のためにウクライナに入った。激戦地の東部のポクロウスクで戦う兵士によると、ウクライナ軍は前線の歩兵が足りず、押し寄せるロシア軍をドローンで食い止めているのが現状だという。もう数カ月も家族に会えていないという兵士の顔には疲労感が染み込んでいた。

 そんな激戦地の東部地区で、そろって戦う母娘に会った。

 ドローンを使った偵察と攻撃を専門とする第411独立UAV大隊のアーニャ(44)は将校として広報活動の任務を負う。3児の母という彼女は14年のクリミア併合時、ドンバス地方で起きたロシア軍に後押しを受けた親露派武装勢力とウクライナ軍の軍事衝突の際に、両親に偽って東部の戦場に向かった。

「両親はおそらくわかっていたと思いますが、戦場に行くことに反対はしませんでした。最初は支援物資を届けるボランティアとして活動していましたが、病院に多くの負傷兵が運び込まれるのを目撃し、メディック(衛生兵)になろうと思いました」

 そう話すアーニャがウクライナの戦況以上に心配しているのは、同じ東部のさらに最前線リマンでメディックとして働く長女のソフィア(18)のことだ。

 私はソフィアに会うために、前線から5キロの位置にある待機所を訪ねた。

 4人の男性メディックと共に活動するソフィアは、72時間スタンバイをして、出動要請があれば現場に急行する日々を送っている。待機時間には、無線からの出動要請に耳を傾けながら、大学のオンライン授業を受け、法律について学んでいた。写真家になる夢を持っていると話したソフィアは、なぜ危険な戦場に身を投じたのだろうか?

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