「八丈島」が一つの目安

 東京で雪が降るか、雨になるかは、まずは南岸低気圧が八丈島の北を通るか南を通るか、その位置次第で決まるといわれる。

 気象庁天気相談所の池田徹所長によると、低気圧が北から寒気を引き込み、雨雲の中の氷の粒が解けることなく地上まで降れば雪になる。

 低気圧が本州から離れすぎたところを通過すると、雨や雪を降らせる雲がそもそも届かない。近すぎると、低気圧に向かって吹き込む暖かい南風の影響で、雨は降っても雪にならないのだ。

 低気圧の発達の程度も関係してくる。低気圧のスケールが大きくなれば、陸地から多少離れていても、低気圧の雲が東京にかかって雪が降ることがある。
 

空気が乾いていると雪に

 そして、低気圧が北から引き込んだ空気が、どれだけ乾いているか、湿っているかもかなり関係する。

 東京に雪を降らせる雲は、高度2000~3000メートルほどのところにある。このあたりの高度の気温は氷点下なので、最初は雪として降ってくる。

「それが冷たい、乾いた空気に当たると、『昇華』という一種の蒸発現象で熱を奪い、周囲の空気の温度を下げる。そうすると、しっかりした雪となって地上に降ってくる。ところが、空気が湿っていると蒸発によってそれほど熱が奪われず、気温も下がらないために、ギリギリ雪とならず雨粒として落ちてくる」(池田さん)

 雪として降ってくる場合でも、気温が十分に下がっていればふわっとした雪となり、雪のかさも大きくなり、積雪量が増す。一方、湿った雪では積雪はそれほど増えない。つまり、湿度の変化によって雨もしくは雪になるかだけでなく、積雪量も変わってくるのだ。

 しかもそれは、地上から数百メートルの間にある空気によって決まる。数百メートルというと、東京スカイツリーほどの高さでしかない。

 そして、その寒気の湿度は、日本周辺の気象条件によって変わる。

 日本海から流れ込んできた空気は、海からの水蒸気を受けて比較的湿っているし、陸地の上を長く移動してきた空気は乾燥している。そのため、前日の気象も考慮に入れなければいけないのだ。
 

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