というのも、平均寿命は延びている一方で、健康寿命は75歳前後のままで大きな変化は起きていないからです。75歳を超えると介護需要が一気に増えます。そしてこの状況は、社会保険料コストの増加が予測される若年層の消費余力を減少させる可能性があります。
こんな環境を打破して生産性を高めて国力を維持しようということで、AI導入が注目されています。実際、他国に比べると日本企業のAI活用は群を抜いていることを示唆する調査もあります。例えば、デロイトトーマツグループが東証プライム市場に上場する企業の部長クラス以上を対象に調査(24年2~3月)したところ9割が生成AIを導入済みと答えており、欧米の企業は2割ほどとの調査もあるだけに日本は群を抜いています。
緩やかな規定
日本を舞台にした注目のAI企業も登場しています。グーグル出身のLlion Jones氏とDavid Ha氏が「Sakana AI」を23年7月に東京で設立しました。自然界の知恵を取り入れた独自のアプローチでAI技術を高める企業に成長させるのではないかと期待されています。
なぜ、シリコンバレーでなく、東京なのか? 考えられる理由のひとつに、法律があります。日本のAI関連法規制は、AI技術の研究開発や実用化において、他国と比較して柔軟性が高いとされています。特に、著作権法の運用において、AIの学習目的でのデータ使用が許容されるケースが多く、これがAI企業や研究者に有利な環境を提供しています。例えば、24年7月22日配信の記事で、「フィナンシャル・タイムズ」は、日本の著作権法の緩やかな規定が、MetaやOpenAIなどの海外AI企業を日本市場に引き寄せていると報じています。一方で、クリエイターからは、自身の作品が無断でAIの学習に利用されることへの懸念も示されています。