中東情勢では、イスラエル国内ではこれまで和平を望む声が過半数でしたが、その比率が2、3割に下がってきている。ネタニヤフ首相の強硬姿勢が指摘されますが、イスラエル社会全体が強硬になっているんです。ネタニヤフ氏は力による対応を続け、支援するトランプ氏就任で情勢はより混乱するでしょう。
イスラエルとアラブ社会の対立において、サウジアラビアのサルマン皇太子の動きも重要です。いま中東情勢に大きく影響しているのがSNS。ガザなどでアラブの人たちがイスラエルに攻撃される情報がリアルタイムで入ってくる。今後、情勢が長期化する中で「アラブ側を支援しなければ」という国民の圧力を背景にサルマン皇太子がアラブ側への支援を強め、さらに混乱が続く可能性もあります。
流動的な朝鮮半島情勢。北朝鮮の金正恩総書記はトランプ政権1期目のとき国際社会から孤立していたので、朝鮮戦争終結の平和条約を掲げたトランプ氏とのディールにも乗りました。しかしウクライナ戦争への軍事支援の見返りにミサイルや核兵器開発の支援をロシアから勝ち取り、「トランプに乗らない」選択肢も出てきた。より強気に出てくるでしょうし、朝鮮半島情勢はより混沌(こんとん)とするでしょう。
いま世界の大きな流れの一つが、米国を中心とするG7と、中国、インド、ロシアなど「非G7」との対立関係。二つを融和させるとしたら、誰かが間に入らないといけない。どちらの陣営からも大切にされて、かつある種、距離を置いているインドのモディ首相の役割は、今後大きくなってくると思います。
トランプ氏が台風の目になりそうな25年、要注目がメキシコのシェインバウム大統領です。関税の件でトランプ氏の「最初のターゲット」に。背景にはトランプ氏が重要視する移民の問題もあります。もう一つ、シェインバウム氏は環境や教育を大切にするリベラルな政策を掲げ、トランプ氏とは正反対。その意味でもトランプ氏はシェインバウム氏に強く当たるでしょう。それに対し、国民の強い支持をバックにしたシェインバウム氏がどう対応するか。大きな注目です。
(構成/編集部・小長光哲郎)
※AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号