「〇月×日の授業でこうおっしゃっています。これは出ると確信しています。いかがでしょうか」
千里の道も一歩から。ひとつずつ詰めていくと出題範囲と内容が絞りこまれてゆきます。次は出題方法です。語群選択か記述式か。考えを自由に書く問題はあるのか。配点はいかに。
根負けなさったか、教員のガードが徐々に下がってきました。よし、ラッシュだ。
30分ほどやり取りを重ねると、試験問題の概要がつかめてきました。「ほかのクラスではここまで話していません」と教員がおっしゃる。知ったこっちゃありません。公平性を保ちたいなら、どうぞほかのクラスでもご説明ください。お任せします。
試験問題をめぐる教員との質疑応答について、同級生の女子学生が後にこう振り返っておられました。
「(警察の)取り調べ並みの質問攻めで範囲を吐かせる姿はとても頼もしかった」

最後の試験始まる
短大生として最後の試験が2024年2月5日に始まりました。
8日までの4日間、6科目に挑んですべてを打ち倒さなければなりません。科目は「子育て支援」に「子どもの食と栄養Ⅱ」、「子ども家庭支援の心理学」、「子ども家庭支援論」、「保育制度論」、そして最大の難関たるピアノ実技の「器楽応用」です。
「子育て支援」では授業中、「絵本だより」の作り方を分不相応にも全クラスの学生に講義いたしました。保育所や幼稚園に通う子どもの保護者に向け、子どもに読んでほしい本を紹介するのが「絵本だより」です。
いえ、志願したのではありません。保育現場に長くおられた女性教員から「いろんなことをかみ砕いて、わかりやすく伝える経験を新聞記者として積んでこられた。その極意を絵本版でぜひ」と頼まれたのです。
短大図書館で絵本関連の文献を読み漁り、本屋さん巡りをして絵本コーナーに入り浸っては新旧の絵本をたくさん買いました。
原資をいかにせむ。
セブンスターの買い控えはもう限界です。某誌に寄稿した書評の原稿料を充てました。