首尾は上々と拝察、慶賀の至りです。当方は、どの科目も試験終了の合図が出るまで席に座っていました。解答を見直すというより、試験の雰囲気をとことん味わいたかったのです。
ピアノで「アラベスク」に立ち向かえ
さあ、ピアノ実技「器楽応用」です。
試験曲はブルグミュラーさんの「アラベスク」です。
すみません、存じ上げない方です。
ドイツの強豪サッカーチーム、バイエルン・ミュンヘンの名FW選手、ゲルト・ミュラーさんならよく知っています。「爆撃機」の異名を持ち、泥臭くゴールを決める姿に憧れていました。共通点はドイツの方であるということだけです。失礼しました。
ピアノ練習曲をたくさん作曲なさったのですね。ピアノを習ったことのある人ならみなさまご存知だそうです。バイエルで両手による演奏の基礎を習得した初級者が、表現力を会得するために学ぶのがブルグミュラーさんの練習曲と知りました。
「25練習曲」のうち、「すなおな心」と「アラベスク」のどちらを試験曲に選ぶかと教員に問われました。
はい、どちらも知りません。
楽譜を拝見、前者の方が音符数は少ない。
では、それで。
教員が2曲を弾いてくださいました。アラベスクのメロディーには聞き覚えがありました。哀愁と情熱が同居しているように聞こえ、心惹かれました。
もとい、こっちにします。
駅ピアノでひたすら練習を
む、右手で弾く小節に16分音符が四つも連なって並んでいます。これがしばらく続いたら、今度は左手部分がそんな状態に。スタッカートもた・く・さん・あ・る。
「˩」の記号とは初対面です。そこでピアノのペダルを踏み込むとな。左右の手に加えて右足も使えと仰せか。
「テンポは一定に」
「ぴんと指を伸ばして弾くのではなく、拳を軽く握って指を繰り出そう」
「でも、とても良い音が出ています」
懇切丁寧なご指導をいただいても一歩前進二歩後退が続きます。同級生や家人にもすがりました。
取材で遠征した折には、駅ピアノで「ラシドシラ ラシドレミ レミファソラ ラシドレミ」をひたすら練習しました。順番を待っていた少年よ、勘弁してくんな。
