吉野ケ里遺跡の説明を受ける東宮時代の天皇陛下と雅子さま=1996年7月、佐賀県

 近くに筑後川などの河川や海があり、食料の確保や水運に適した条件がそろっていた吉野ケ里は、弥生時代の約700年をかけて、小さな「ムラ」が「クニ」の中心部になっていったと考えられている。

「皇太子でいらした陛下は、水と水運の歴史を長く研究されているだけあって、説明もすぐに理解されておられました」(七田さん)
 

 そして再び七田さんが陛下と対面したのは2004年。遺跡のある国営吉野ケ里歴史公園で、「全国みどりの愛護のつどい」の式典が開かれた。

 遺跡の発掘現場を訪れた陛下は、案内役の七田さんの姿を見ると、穏やかにほほ笑み、こう声をかけた。

「七田さん、テレビ見ましたよ。大変でしたね」

 テレビとは、NHKの番組「プロジェクトX」のこと。番組は、高校教諭で考古学者だった七田さんの父・忠志さんと息子の七田さんが、吉野ケ里遺跡にかけてきた情熱を描いたもので、陛下はその回をご覧になったのだった。

 思わぬ話題に慌てる七田さんを、陛下は笑顔で見つめていらっしゃったという。

御料牧場で静養中に、仲良くタケノコを収穫された天皇ご一家。和気あいあいとしたご家族の雰囲気が伝わる一枚=2024年5月、栃木県の御料牧場、宮内庁提供

天皇ご一家は、仲の良いご家庭

 そして今回、佐賀城の歴史館を歩く愛子さまから、七田さんにこんな「伝言」があった。

「父から(七田さんのことを)伺っています。よろしくお伝えください、と」

 陛下が覚えていてくださったことに驚いたと、七田さんは振り返る。

「仲の良いご家庭ですね。ご家族で佐賀のスケジュールをご覧になるなど、普段からいろいろとお話をされていらっしゃることが伝わってきました」
 

 歴史館を出発する間際、愛子さまは七田さんに話しかけた。

「お身体を、お気をつけください」

 相手を和ませる愛子さまの笑顔は、ご両親とそっくりでいらっしゃると思いながら、七田さんも笑顔を返したという。

(AERA dot.編集部・永井貴子)

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