やがて元号が変わり、『夜のヒットスタジオ』や『ザ・ベストテン』といった歌番組が相次いで終了した89年。だいぶ我に返った世間は、突如として時代を「ネタ化」し始めます。今なお一発芸として受け継がれている、工藤静香の『嵐の素顔』やWinkの『淋しい熱帯魚』は、いずれもこの年の曲です。あれだけ熱狂したはずの『光GENJI』も『のりピー音頭』も、一気に想い出として昇華されていく中、かの中山美穂はどのように立ち回ったか。

 90年1月~3月期に放送されたTBS系ドラマ『卒業』で、なんと現役女子大生役を演じ、女友達と連れ立ったスキー場のゲレンデで、「どこかにいないかな。三上博史みたいなイイ男」などという、中山美穂にはあるまじき台詞を吐いたのです。私はこれを『中山美穂・人間宣言』と呼ぶと同時に、『バブル終焉』の碑と位置づけています。主題歌は新進気鋭のドリカムの「笑顔の行方」でした。それまで日本社会を取り巻いていた価値観が、何もかも変化したのがこのドラマだったように思います。

 その後も『オヤジギャル』や『24時間戦えますか?』など、時代に対する自虐は激化し、『渡る世間が鬼ばかり』がスタートしたのも90年です。

 そして91年。『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』といった、トレンディと呼ぶには重過ぎるドラマが社会現象化し、KANが「最後に愛は勝つ」と唄ったことで、バブルはついに終焉を迎えました。ミポリンも同年リリースした名曲「Rosa」の中で、「本当に転ばなきゃ何もかもわからない」「あなたの過去にさよなら」と、過ぎし時代に別れを告げています。

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